Web小説多すぎて発掘するのめっちゃ大変|海猫沢めろん
初めまして、めろん先生こと海猫沢めろんです。今週からこのコーナーでWeb小説を紹介することになりました。
普段は主に小説書いてますが、他にもゲーム作ったりいろいろです(詳しくはググってください)。新手のバーチャルYouTuberくらいの温度で接してもらえるとちょうどいいと思います。
無料テキストが無限にあふれる現代、広大すぎるWeb小説の世界に興味がある方は、誰もがこう思っているはずです。
「何か面白いものを読みたいけど、いったい何を読んだらいいのかわからない」
わかる!!!!そう!!それ!!Web小説多すぎ!!誰か面白いの教えてください!!
我々はそんな要望にこたえるべくあらゆるWeb小説を観測し、キラリと光る作品を発掘したいと思っています。
一応ここはエブリスタの関連サイトなんですけど、そういうの無視して、なろうとかカクヨムとか全部が対象です。
基本的に編集さんがセレクトしたものを読んで「お、これは面白い……」と思ったものをぼくが紹介するという形でいきたいと思います。
まあ能書きはどうでもいいんで、とりあえずさっそく一本目行きましょう。
まずはカクヨムさんに連載中のこの作品からです。
異世界言語に注がれる異常な情熱
作品名:異世界転生したけど日本語が通じなかった
作者:Fafs F. Sashimi
「初めまして。あなた方が見てきた異世界転生ものは実際に異世界のものではないと思われます。我々が新たに本物の異世界転生ものをお見せしましょう。一つ伝えておくべきことがあります。読者様には我々の言語であるリパライン語を学ぶことが出来ます。『リパライン語』あるいは”lineparine”で検索をしてみてください。答えがあるでしょう。」 主人公である八ヶ崎翠(やつがざきせん)は異世界でチーレムを目指しますが、いきなり出会った銀髪蒼眼の少女と会話が通じない。どうやらこの世界はリパライン語が公用語らしい。
地道に解読作業を進めているうちに、この国の情勢がだんだんとわかってくるが……何やらきな臭い宗教戦争の匂いが……。
異世界いくじゃないっすか?
言葉通じないじゃないっすか?
普通チートするじゃないっすか?
しないんですよ。
チートなしでえんえんとマジで解読していく。気が遠くなりそうですが、これが面白い。
ひと味ちがう異世界転生を読みたい人にはオススメの一作。
ぼくは語学に精通していなので、作中の『リパライン語』というのがどのくらいの完成度なのかはわからないんですが、それはともかく、別の国に行って言葉を学ぶというのがどういうことなのか、どういう方法があるのか、読んでいると非常に勉強になります。ともかく言語に注がれる静かなる情熱が異常(褒め言葉)。
一点突破型の作品なので人を選びますが、そこが良い!
全体的に未開の民族の言葉を学ぶ苦学生の手記みたいになっちゃってますが、それも良し!
異世界で無双したい人はイライラするだろうけど、無視して良い!
「これが書きたいんだ!」という気持ちに溢れた潔い作品。エスペラント語が勉強できる百合ゲー『ことのはアムリラート』らしきものについてのネタがあることから、この先に百合展開もあるのか?いや……ないな。なくていいです。
まだ連載中で、すでにけっこうな読者がついていますが、いまからでも遅くないのでおっかけましょう。(ネットで異世界言語といえば、個人的には「人工言語アルカ」を使った奇書『紫苑の書』なんですが…..危険なので言及を避けます)
続いて二本目に紹介するのはこちら。
人気ジャンル「もののけ」×「グルメ」の新鋭
作品名:晩ノ飯―もののけ、ヒトの子、最後の晩餐―
作者:いちの
清水夜彦は数年前に父親を亡くし、離婚した母親の仕送りで一人暮らしをする高校生。そんな夜彦は、ある晩に山奥で明かりの灯る不思議な料亭を発見する。
その名も、『和食処・晩年亭』。
Web小説といえば「異世界」「転生」「チート」……が代名詞となっていますが、投稿サイトによってもちょっと違いがあるようです。
エブリスタで人気なのは「もののけ」「グルメ」というジャンル。
他サイトでもすでに定番となっているのでご存知かと思われますが、このジャンルは、ストーリーはもちろん、料理描写も上手い人が多くてプロ顔負けの作品も。
そんな中、この『晩ノ飯』という作品に出てくる料理は、天ぷらそば・筑前煮・白米・味噌汁、かなり地味です。
でもそれを食べるキャラクターのリアクションがいいんです。
異世界の料亭に迷い込んだ主人公に、実は退魔の才能があって……という展開のなかで、小道具として登場する素朴な食事が、文字通りいい味を出しています。
文章や作品全体から、小説を書き始めたときの初々しい感じがでていて、非常に好感が持てます。
さきほど紹介した「異世界転生したけど日本語が通じなかった」とは逆に、全体的に丸い印象で、尖ったところがないけれど、好きなものを書いているのが良い。
気にせず自由に書いて、世界をひろげていって欲しいです。
……というような感じで、このコーナーでは、
・書籍化されていない
・とにかくなんだか気になる
・これは来そう/絶対来ない、けどヤバい
そんなWeb小説を紹介したいと思います。
ていうか、Web小説多すぎて発掘するのめっちゃ大変なんで皆さんもオススメあれば教えてください。
あ、できればランキング下のほうで面白い作品を発見したいです!
「Web小説定点観測」は毎月第3火曜日に更新です。
ではまた。
*本記事は、2018年02月20日に「monokaki」に掲載された記事の再録です。