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陰キャってネクラとなにが違うの?|海猫沢めろん

こんにちは、日本一NO FUTUREでパンクなペンネームの作家、海猫沢めろんです。ファッキュー!!! インテリは死ね!
誰に中指を立てているのかわかりませんが、日本語が読めるのでぼくもインテリです! DIEEEEE!

さて前回に引き続き「陰キャ」テーマの小説を読みます。
まずはこれ。

架空のクラスが像を結ぶ良作

作品名:女王蜂が死んだ
作者:古矢永塔子

私立名門高校の学園祭の前日、ひとりの女生徒が屋上から飛び降りた。

クラスの女王的存在で、誰からも愛されていた美紅。
彼女はなぜ死んだのか。
事件から1年後、スクールカウンセラーの女性により、徐々に死の真相が明らかになる。

自殺した生徒は本当に自殺なのか?
彼女に関わる人々へ順番にインタビューしていく、芥川龍之介「藪の中」風の物語です。

担任の先生から始まり、クラスメイトの男女へのインタビューが続くのですが、年齢と男女の書き分けがちゃんとできているところがGOOD
謎がだんだんと明らかになっていく過程、どんでん返し、読みやすさ、いろいろなところに気を使っている良作。

クラス内の話なので当然、「陰キャ」だけではなく「陽キャ」も出てくるわけですが、そうしたキャラ付けって、クラス内のスクールカーストによって貼られるレッテルだよな……と、ふと気づくと架空のクラスのことについて考えていたりして、非常に面白かったです!

そして次もスクールカーストもの。


文芸誌に載ってそうで載っていないリアル

作品名:橘美琴はつぶやかない
作者:小鳥遊よだか
URL:現在掲載無

ある日突然、面識のないJKの生霊に憑依されて書きました。どうやら彼女はLINEやらツイッターやらのSNS社会についてなにか言いたかったようです。私にはよくわかりませんが。

この作品、「破滅派」というオンライン文芸誌に掲載されているんですが、ここ、けっこう面白い作品があるので注目しています。なんか他の投稿サイトと違う……文字通り破滅的なにかがある!(気がする)

この作品は、スクールカーストのなかで特に目立つこともない主人公が、SNSに囲まれた生活にうんざりしつつ生きる様子が描かれています。
コメントによると生霊に憑依されて書いたとのことですが、わかります。よくありますよね生霊に憑依。というか憑依されないとぼくも書けません。

文芸誌に載ってそうで載っていない「リアル」な感じがよく出ていて、最近の舞城王太郎っぽさがありつつも、混沌とした感情を淡々と記述する筆致もこなれています。
クラスのLINEにうんざり、クラスの一軍にうんざり、ここで描かれている気分はかなり普遍的です。
テクノロジーが進んでも、人間やっぱ同じなんだなあー……ということは陰キャってのも、昔の「ネクラ」とか「オタク」とかと同じなんでしょうか? そうなのか? ちがうのか?


「十代に共感する奴はみんな嘘つき」(※当の十代も含む)

今回の二作と前回の作品、続けて「陰キャ」について書いてもらったわけですが、みなさん「陰キャ」についてのイメージがそれぞれ違うんですよね。でも大きく分けて、

・暗い、内向的、目立たない人
・スクールカーストが低い人

この2つが「陰キャ」という言葉につきまとっているようです。
……いや、それって前からある『ネクラ』となにが違うねん! 同じやん!
と言いたくなりませんか?

同じなんです。

ただ、同じでも、実際にこの言葉が生まれた十代の現場ではなにかが違う。それは大人にはわからない。現役でそれを使ってる人も実はわかっているようでわかっていない。

『十代に共感する奴はみんな嘘つき』という最果タヒさんの詩集がありますが、この言葉には当の十代も含まれているんだと思います。

思春期の人間から出てきた言葉をうまく説明するなんて、どこまでいっても嘘くさすぎる。
現実は、それを言語化した時点でもう現実からズレているわけで、どこまでいってもフィクションなんです。
だけど、そのフィクションに自覚的でありながら、現実にせまろうとするような作品が読みたい!
これはどのテーマだろうが同じです。

応募作はさすがにみんな上手くて、どれもレベルが高いんですが、欲を言えば「陰キャ」の真実に迫るなにかが読みたかったです!(なんだよ真実って)


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*本記事は、2018年11月20日に「monokaki」に掲載された記事の再録です。

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