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「SF」って何ですか?|編集 ミヤケル


 みなさん、「Project ANIMA」ってご存知ですか?

 途方もなくざっくりいうと「いっちゃんおもろいアイデアを、超一流スタッフがアニメにしちゃいまっせ!」という、感じの投稿イベントです。
企画書でも応募ができるので、これはもう参戦するっきゃありません。
(2018年4月15日が第一弾の〆切!)

 だがしかし!

 第一弾のテーマ「SF・ロボットアニメ部門」に、私は引っかかるのです。
(「SFって何ですか?」というタイトルにしてしまいましたが、これはもう議論が尽きないので各自で検索してください……)

 私が伝えたいのは、「熱いSF」とは何だろうということです!

巨大ロボに乗るとパイロットは死ぬ

「そもそも、そのロボットに人間が乗り込む意味ってあります?」

 古今東西、あらゆるロボット関連作品がありますが、私は何よりも先にそこについて考えてしまいます。
 だって、ロボットがある世界なら優秀なパイロットAIだってありそうじゃないですか?

 ……こんな捻くれた思想を持つようになった原因は、若き日に読んだ『空想科学読本』というSF考証本にあります。
「激しく動く機体に人間が入ると、どう考えても酔う、というか死ぬ」的なことが理路整然と書かれていたのです。
 それ以来、私はロボットを見た瞬間に、人間が乗る必然性ばかりに注目してしまうようになりました。

 すると、あることに気がつきました。
 “人間がロボットに乗る必然性”が高い作品は、押し並べておもしろいのです

 『機動戦士ガンダム』は”ミノフスキー粒子”のせいで、レーダーが機能しないので接近して戦うしかない!
 『新世紀エヴァンゲリオン』は、機体と人間が同調しないといけないし、謎の液体でしっかりとパイロットを保護してる!!

 そして、最近では「高性能の無人機を開発できなかったから、”人間”扱いしなくていい存在を搭乗させればいいんじゃね?」という作品がヒットしています。

 『86―エイティシックス―』(安里 アサト)という作品です。


血肉の通ったロボット

 『このライトノベルがすごい! 2018』の「文庫部門」新作1位&総合2位にランクイン。3巻が発売した段階で25万部を突破した話題作です!

 あらすじは公式サイトを読んでみてください!(外部サイトにリンクしています)

 ……おかえりなさいませ。

 なかなかにというか、ライトノベルとしては恐ろしくハードな内容ですよね。
 主人公のシンとその仲間は、命をかけて戦う他にありません。
 あまりにも過酷な環境の中で、もっとも生き残る可能性が高いのが、”有人の無人機”に乗り込むことなのです。

「もしも、自分がその状況だったら同じ選択をするしかないかも……」

 読者にそう思ってもらうことができたからこそ、この作品は広く受け入れられたのだと思います。
 この”必然性”こそが、無機質なロボットに血肉の通ったドラマを付与してくれるのです
 逆にいうとそこを大切にしていない作品は、物語に対する真摯さを欠いていると言わざるをえません。(アレとかアレとかアレとか……)

「SFとは法螺話だと思っている」とは、筒井康隆先生の言葉です。
 この法螺話を成立させるためのロジック=真摯さがSFの醍醐味であると、私は思います。
 これは、テクノロジー系のSFだけに限った話ではありません。
(ちなみに「Project ANIMA」の第一弾も、SFであればロボットがある必要はありません)

「異能・超能力が当たり前」
「宇宙人・怪物が闊歩している」
「終末戦争が起きた後は……」

 読者が想像もしていなかった世界にのめり込んでもらうには、実感できるレベルの納得感が必要にになってくるのです。

「SF的な発想の飛躍」と「物語のおもしろさ」。

 この2つを結びつけるのが、”必然性”ではないでしょうか。


設定は大事、けれど……

 このコラムの#1 では、「どんな質問にも答えられるくらいに、キャラクターのことを考えるとええんちゃう?」といったことを書いた記憶があります。

 これは、作品の設定にも言えることです。

「別次元から謎生物が攻めてきて人類は大変」という、どこかで見たような世界観でもかまいません。
 けれど、その謎生物の出現で社会がどう変わったのかまで、しっかりと考えて欲しいのです。
「食料はどうなってるの?」「政府や学校は?」「外国の状況は?」

 こういった部分まで決めておくと、自然と説得力が生まれてくるのではと思います。

「えっー、そんなのは当たり前じゃないんですか?」

 ……はい、ここまで読んでそういう感想を持つ人は要注意です。

 設定を説明し過ぎていませんか?

 せっかく考えたことですから、なんとか入れ込みたいですよね。
 敢えて言いますが、それは蛇足です。

 設定はあくまでも物語を支える為にこそあるべきだと私は考えます。
 ストーリーの流れを滞らせてまでの説明は、読者にとっては苦痛です。
 物語を盛り上げる為に必要な部分だけ示しましょう。

 心配しなくても、あなたの考えた設定はしっかりと作品を支えてくれています。
 アイデアだけで終わらない、あなただけの熱〜い物語を投稿してみてください。

(タイトルカット:16号


今月のおもしろい作品:『86―エイティシックス―』

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サンマグノリア共和国。そこは日々、隣国である「帝国」の無人兵器《レギオン》による侵略を受けていた。しかしその攻撃に対して、共和国側も同型兵器の開発に成功し、辛うじて犠牲を出すことなく、その脅威を退けていたのだった。そう――表向きは。
本当は誰も死んでいないわけではなかった。共和国全85区画の外。《存在しない“第86区”》。そこでは「エイティシックス」の烙印を押された少年少女たちが日夜《有人の無人機として》戦い続けていた――。第23回電撃小説大賞《大賞》受賞作、堂々発進!


*本記事は、2018年03月08日に「monokaki」に掲載された記事の再録です。

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