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表現したい得体の知れないなにか|海猫沢めろん

ジェームズ・キャメロン、キャメロン・ディアス、そして海猫沢めろん――世界三大めろんである俺、めろん先生です。
こんにちは。

花粉が……花粉がヤバい……粘膜が痒いです……。
めろん先生をやっている場合じゃないくらい痒い……。
毎年この季節になると粘膜を焼き払いたくなる殺意の波動に目覚めてアイボンで邪気眼を洗い続ける妖怪。それが俺です。決め台詞は「ニンゲン……モリ……ヨゴス……コロス……」。

それはともかく、さっそくWeb定点観測をはじめましょう。
今回もすごいです。
第二回目にして、またいいやつ発掘してきましたよ(編集さんが)。

本目に紹介するのは、粘膜地獄のめろん先生こと俺にぴったりな、粘膜=アナルに電流を流して戦う最高にクールな設定のWeb小説です! アナルに電流を流して戦う最高にクールな設定のWeb小説です!

大事なことなので二回言いました

それから先? ……脊髄にきいてみろっ!!

作品名:(Nooooo!!)ダメ×人×間×コン×テス×ト×V★2
作者:gaction9969
URL:https://ncode.syosetu.com/n2647em/

(前口上)
ウオオオオン!! 作者(オレ)はもう大脳を使って書くのをやめるぞぉぉぉぉぉっ!!
設定? プロット? 細けぇこたぁいいんだよ! 延髄・脊髄・骨髄の三兄弟が、俺に輝けと囁いているんだ……
ダメ出づる国から、正気の皆様へ。溜王国遣髄使の名にかけて、2018年もやるしかな↓い↑
知ってる? リレンザってね、鼻から吸った方が背徳感が増してカッコいんだよ……(真似しないでね!)

(あらすじ)
ダメ人間は、ダメ人間により、ダメ人間としての道を歩み始めるのであった……それから先?
……脊髄にきいてみろっ!!(2018年最推しパワーワード)

あらすじからすでにビンビン来てます。なにが? 才能です! こいつはやべえ……。
というかあらすじを読んでも内容がさっぱりわかりません!
これがもし新人賞原稿に送られてきたら即落とされそうです……が、ここはWeb小説無法地帯けものはいてものけものはいません

主人公である水窪若草はアオナギという謎の男に誘われ、賞金2億の「ダメ人間コンテンスト」に出場することに。
「ダメ人間コンテンスト」……それは、己のダメエピソード、『DEP』を電流に変換し、相手のケツにキツい一撃を食らわし合うバトル。
今回の「ダメ人間コンテンスト」(前作もありました!)は女性限定。しかも『DEPパート』と『格闘パート』を交互に行うチェスボクシングのようなルールである。果たして水窪の運命やいかに……!

全体的に『グラップラー刃牙』と『アベックパンチ』と『稲中卓球部』を合体させたような……いや……なんかそういうもんじゃなくてやっぱおかしいですわこれ……

水窪が試合前に鍛えられたあと、洗脳されて一人称が変化し、両国国技館地下『イアハノナノス=ドチュルマ国技場』に赴いたときの<溜王国 国歌斉唱>シーンが好き。

全体的にやる気があるのかないのかわからないバイトが作った、妙に美味いまかないジャンクフードのような、初期衝動と勢いに任せた小説です。
こういうタイプの小説、めっちゃ好きなんですけどだいたいが途中で失速しちゃったり、つまんなくなる……のに、これずっと面白いです野生の奇跡ダメに乾杯


普遍的でコンセプチュアルな女子校もの

そして今回の二本目。

作品名:ガールズ プール
作者:村むらさき

女子校に通う「私」は、いつも一緒にいるクラスメイトの陽子・千紘・実花の3人のことが本当は大嫌い。
でもそんなこと言える訳もなく、日々悶々と過ごしていた。
そんな「私」の目の前に、「女子校生」の写真ばかり撮る明日香が現れて…。
クスクス笑いの耳障りな空気の振動。ひみつのたくさん詰まった交換ノート。連れ立って行くトイレ。陰口。
女子特有の「めんどくせえ」を集めました。

一本目でハシャぎすぎたので、二本目は落ち着いたやつを……。
転生もチートも異世界もない、女子校舞台のコンセプチュアルな作品です。
タイトル通り、閉じられて息苦しく、でもどこかキラキラしているプールみたいな世界を生きる女の子たちの日常が描かれてます。

散文と小説のあいだのような描き方をしているんですが、水彩画みたいなイメージで、とても作風にマッチしてます。
ときおり挟まれるフレーズに毒と上品さがあるのも良い。

興味なさそうに、でもきちんと悪口で、実花の言い方は完璧だった。

とかね。

なにか不思議な読後感があって「あれ? なんだろ?」と思ったんですが、読み返すとこの作品、携帯もスマホもSNSもパソコンも出てこないんですよ。
デジカメがかろうじて出てくるくらい。
女子校生と言われて思いつく、ありがちなガジェットがない(ワリキリとかも)。

意識的なのか無意識なのかはわからないんですが、それによって作品から時代性が消え、昔でもあり今でもあるような普遍性がそなわっているのが面白い。
マンガなんかでもそうなんですが、初期作品を読むと無駄なものが入ってないぶん、作者の個性が際立つっていうことがよくあって、そういうタイプの作品になってます。

というわけで今回の二本でした。
二回目にしてWeb小説のカオスさにやられてます……マジでジャンルとかない……というか、全ジャンルありますねこれ
読者を獲得するためエンタメに振り切った異世界チート転生の陰で、ひっそりと純文学っぽいもの書いてる人がいたりして、どれも同じ尺度で評価できないものばかり。
確かなのはみんな表現したい得体の知れないなにかがあるということです。

次回もそうした、得体の知れないなにかを観測していきたいと思います!


……というような感じで、このコーナーでは、

・書籍化されていない
・とにかくなんだか気になる
・これは来そう/絶対来ない、けどヤバい

そんなWeb小説を紹介したいと思います。
これを読んでくれ! という作品があれば、自薦他薦は問いませんのでお知らせください。ひっそり読みます!
(一回目終了後にいくつか推薦がありました!あざっす!)

「Web小説定点観測」は毎月第3火曜日に更新です。
ではまた。


*本記事は、2018年03月20日に「monokaki」に掲載された記事の再録です。