子どもが本と仲良くなる最初の一冊を書いてみませんか?|「ポプラキミノベル小説大賞」 門田奈穂子&斉藤尚美&松田拓也
2021年3月に創刊し今年で3年目に突入したジュニア文庫レーベル「キミノベル」。去年に引き続き今年も「ポプラキミノベル小説大賞」が開催されることになりました。
募集の告知に合わせて、どんな作品を求めているのか、現在のジュニア文庫の現状について聞きました。
小学4~6年生までがメインターゲットのジュニア文庫。謎解き、バトル、恋愛、ホラーなど広範囲のジャンルのエンタメ作品が刊行され、これをきっかけに本好きになる可能性が非常に高い本読みの入り口のひとつになっています。応募開始は5月26日、〆切は8月31日です。
編集者さんへのインタビューを読むとどんな作品が求められているのかわかるはずです。興味が湧いたら書いて応募してみませんか?
今回はキミノベル編集部の門田奈穂子さんと斉藤尚美さんと松田拓也さんにお話を伺いました。
「キミとつながる、エンタメノベル文庫。ポプラキミノベル。」
──「ポプラキミノベル」のご紹介からお聞かせください
門田:2021年3月に創刊して現在は3年目に入ったジュニア文庫のレーベルです。ポプラ社は実は1976年と早めにジュニア文庫を始めているのですが、途中で何度か改新しており、今回が3回目のリニューアルです。市場の特性や雰囲気がどんどん変わっていくため、その度に読者に合うスタイルにレーベルを新しくしています。
──ジュニア文庫が変わったなという風潮はどういうものだったんでしょうか?
門田:前身の「ポプラポケット文庫」を創刊した2005年頃には、「講談社青い鳥文庫」さんがヒットシリーズを多く生み、ジュニア文庫を読む子が増えてきていました。シェアも圧倒的でした。ポケット文庫創刊後に「角川つばさ文庫」さんと「集英社みらい文庫」さんが参入されて、それまでなかったラノベ的なコンテンツや人気コミックのノベライズなどが一気に入ってきて、カバーデザインが今風に変わり、中身のスタイルやテーマも変わってきたように思います。
松田:「つばさ文庫」さんが今年創刊15周年を迎えられています。「つばさ文庫」さんは創刊当時、『涼宮ハルヒの憂鬱』を子ども向けにしたり、『サマーウォーズ』のノベライズといった新鮮な風を児童文庫の棚に吹き込まれました。オリジナル創作においても、ラノベ的感覚を取り入れられて、キャラクター小説の側面も強くなっていったと思います。「みらい文庫」さんは『ワンピース』や『ちびまる子ちゃん』のノベライズに始まったのもあるのか、オリジナル創作でもマンガ的な展開や視覚的要素をうまく取り入れられている印象です。児童書はかくあるべきといったものがいい意味で薄れていって、子どもがほんとうに読みたいものとして広がっていっています。
──作品一覧を見ていて映画『E.T.』や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『ジュラシック・パーク』があって驚きました
門田:ジュニア文庫レーベルの多くでは、オリジナル創作と古典名作が同居しています。古典名作の定番はどこもだいたい同じものになります。その中での新創刊はつまり最後発になるということですから、なにか特色を出したいねって話になり、今まで名作としてはラインナップされていなかったものを新しい名作として出すのはどうだろうと作品を探していたんです。そんな中で見つけた『E.T.』をきっかけにユニバーサルさんとつながりができ、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』などが続きました。今親になっている世代がよく知っている作品なので、お父さんやお母さんにすすめられたとか、親子で読んだという声がよく届きます。
──親子でといえば、私の世代だと、中田永一さんの作品『彼女が生きてる世界線!』もあって、大人でも読んでみたいなと思いました
松田:中田永一さんや望月麻衣さん、綾崎隼さんなど一般文芸で活躍されている方の、キミノベルでしか読めない書き下ろし作品も特色かなと思います。もちろんどれも、小学生が読んで面白く、感動できる作品です。
──『かがみの孤城』もキミノベルから出ていますね
松田:辻村深月さんの『かがみの孤城』はご存じのように一般書で大ヒットした作品で、昨年映画化もしました。13歳の女の子が主人公で、同世代の子どもには特に勇気や感動を与えてくれる物語なので、小学生が読みやすいように工夫して、キミノベルで刊行しました。村山竜大さんに挿絵をたくさん描いていただき、漢字にはふりがなをふっています。
斉藤:また、最後に辻村さんから子どもたちへ向けたメッセージをいただきました。冒頭には登場人物の絵やお城の見取り図が入っていて、より楽しみながら読めるようになっています。
──キミノベルのホームページを見させてもらったんですが、読者の方から「たのしみにしています」とかいろんな反応が掲示板に書かれていて、本好き感が出ていてすごくいいなと思いました。イラストも投稿できますし、YouTubeのコーナーもあります
門田:「キミとつながる、エンタメノベル文庫。ポプラキミノベル。」というキャッチコピーで創刊しまして、コミュニティ型文庫レーベルをめざしています。他にはない掲示板機能があって、キミノベルの本を読んだ子どもたちが集まり、自由に発言して友達になっていく。本の感想も交換しているんですけど、それ以外のことも活発におしゃべりしてくれています。
松田:最近は自分の本棚を作れる機能ができて、おすすめコメントを書いてくれる読者も増えてきました。
──学校で読書友達がいなくても、このレーベルで日本のどこかにいる友達と繋がれるというのはすごくいいことですね
斉藤:本を読んで話をしたいと思っても、できる相手がいないという子も多いみたいです。でもここならたっぷり話せます。
──今の読者がこのサイトで交流して、大人になってから実はあの時……みたいな話になって盛り上がるかもしれません。読者にとっても出版社にとっても素敵な財産になりそうですね。掲示板も牧歌的でよかったころのSNS時代を彷彿させます
門田:掲示板の投稿は、アップする前に全部確認しています。だから投稿してもすぐには載らず、翌日載るというゆっくりしたやりとりになってしまうのですが、かえってそれを楽しんでくれている子もいます。
──キミノベルの作品の特徴であったり、代表作などを教えてもらってもいいでしょうか?
門田:オリジナル創作でヒットしている代表作は『歴史ゴーストバスターズ』(作:あさばみゆき/絵:左近堂絵里)というシリーズです。5巻まで出ていて、どんどん人気が広がってきています。
松田:「歴バス」シリーズは、歴史の知識が物語を楽しみながら身につくというのが新しいんです。主人公の天照和子ちゃんはめちゃくちゃ歴史に詳しい歴女なんですが、成績優秀容姿端麗で友達なんかいらないっていう女の子です。彼女は昔いろいろあって現代には興味がなくて、歴史の世界に生きる宣言をしているのですが、狐屋コオリという祓い屋の男の子とひょんなことからコンビを組むことになります。コオリくんが祓う幽霊というのが歴史上の人物の名前を食って、悪霊化したものなんです。
──すごく今っぽい設定ですね
松田:その幽霊に取り憑かれた人が、信長だったら信長っぽい行動を取るんですね。それを和子ちゃんの歴史の知識によって、名前を思い出させて成仏させてあげる。ちょっとした謎解き要素もありつつ、二人のコンビのラブ?なところもありつつ、バトルも楽しい、という作品になっています。
異世界ではなくて、読者と同じ世界に生きているので共感を呼びやすいし、成長していく和子ちゃんに「カッコいい!」という憧れを抱いてもらっているのだと思います。
──応募する人は『歴史ゴーストバスターズ』は読んでおいたほうがいいかもしれないですね
門田:「歴史」という強いフックがひとつあって、色がはっきりしているのが強いと思います。
日常と地続きの舞台に少し不思議な要素があるものが人気
──最近のジュニア文庫の動向について教えてください
門田:ポプラポケット文庫の頃は魔女や魔法がブームで、ファンタジー要素が強いものが特に人気がありました。今は日常舞台の中に少し不思議な要素が入っているものがよく読まれていると感じます。日常はイメージしやすいので、ハードルが低くて入りやすく、共感しやすい。そこに込められる少し不思議な要素が、憧れや刺激をくれ、ワクワクさせてくれるということでしょうか。
──「ハリー・ポッター」シリーズや『指輪物語』みたいな西洋ファンタジーはあまり読まれなくなっているということでしょうか?
松田:もちろん好きな子はいます。ただ、ジュニア文庫においては出だしが「ここは○○国」みたいなものはあまり読まれない印象ですね。
ジュニア文庫を読む子どもたちはまだ読書に慣れていない子も多いので、ハイファンタジーだと舞台設定を理解するのに時間がかかってしまうんです。自分の生活と近しい設定であれば、まずそこの理解をしなくて済むのが大きいと思います。
──なろう系の異世界転生や一般文芸でも歴史ものが流行ってますが、例えば後宮ものとか設定がガッツリ決まっているとハードルが高いですよね
松田:はい、そういうジャンルを読んでいる人はお約束を理解しているのでストレスなく読めると思うのですが、まずそこの理解が小学生では難しいことが多いです。転生ものも、剣と魔法というファンタジー世界がわからないと楽しめないので。
──ジュニア文庫は、好きな子は発売日に書店に買いに行くというイメージがあります
松田:自分のおこづかいで買うタイプの本ですね。名作は親が与えるパターンもありますが、オリジナルに関しては子どもがみずから読みたいものを選んでいるのがほとんどだと思います。
──学校での朝読の時にも読まれている感じでしょうか?
門田:はい、『小説 魔入りました!入間くん』(原作・絵:西修/文:針とら)は原作がマンガでアニメ化もされている作品なのですが、小説版なら学校で読んでも怒られない(笑)。だから朝読で人気のようです。もちろんそれだけでなく、マンガやアニメのノベライズは、普段本を読まない子でもこの形なら読みたくなるし読めるということで、読書の入り口になってくれています。内容は基本的にマンガと同じなんですが、文章で読み直すと、わからなかったところがわかったり、新しい発見があったりして、新鮮におもしろいんですよね。
松田:マンガは買ってもらえないというご家庭もまだまだあります。でも、小説ならいいよ、と。コミックスは秋田書店さんの『週刊少年チャンピオン』で連載されているのですが、入間くんが少しずつ自分の感情や欲に気づいていく展開が、「初めて」の感情を描く児童文庫にぴったりだと思い、企画を持ち掛けました。
小学4年生から読めるような作品を求めている
──今回の応募要項に主人公の学年が小学5~6年生の作品を特に歓迎しますとありますが、そのくらいの読者がメインで買って読んでいるということなんでしょうか?
門田:そうですね、メインは5、6年生なのですが、キミノベルはジュニア文庫全体で見ると少し上めの読者が増えてきたなという気がしています。しかし今のジュニア文庫は200ページを切るような、4年生でも読みやすいものが増え、より低年齢の子どもたちも、ジュニア文庫の棚にやってくるようになっています。キミノベルも、その子どもたちにちゃんと届けられるものも出していきたい。そこで今回、主人公を読者世代が共感しやすい同学年ぐらいに限定しました。
また、先ほどファンタジーが難しいという話がありましたが、主人公が「小学生」だと、自然と入り口が日常の話になってきますよね。
──ジュニア文庫では恋愛ものはどうでしょうか?
門田:今はジュニア文庫でも恋愛ものは非常に大きく強いジャンルです。これも15年くらい前とはだいぶ変わったところですね。
斉藤:自分に取り柄がないと思っている女の子が人気者の男子と急接近したり、複数の男の子に想いを寄せられる逆ハーレムものだったり、気になる男の子と一緒にミッションを達成していくなど、女の子の憧れを叶えてくれるシチュエーションのお話は人気があります。キミノベルではいろんなタイプの男の子と寮生活をしながら友情を深めていく『恋愛寮においでよ☆』(作:麻井深雪/絵:池田春香)が大人気です。そういった大きな枠組みはありつつも、人気作は細部にしっかりオリジナリティがある。また、型にはまらない恋愛ものをぜひ読んでみたい気持ちもあります。
──今回の応募は恋愛ものでもいいわけですよね?
門田:もちろんOKです。去年の「第2回キミノベル小説大賞」では「キュンキュン胸がときめく物語部門」と「ワクワク心がはずむ物語部門」の二部門に分けて募集したのですが、今回は部門は問いません。
というのは、これまで二回開催したなかで、謎解き×恋愛とか、幽霊×恋愛とか、組み合わせているものにおもしろい作品が多い印象があり、受賞作にもその傾向があるので、分ける必要はないかなと思った次第です。
斉藤:あとですね、恋愛だけだとちょっと難しい、別の理由もあるんです。ジュニア文庫にはハマりたい、没頭したいという欲求を満たしてくれるものが求められていると思うんです。その気持ちのまま次の巻を追いかけたいと。ところが恋愛ものは二人が結ばれると終わってしまうんですね。シリーズ展開しづらいんです。
──恋愛ものだと1巻で終わってしまう可能性もあって、シリーズ化は難しい
松田:例えば僕は高橋留美子作品が大好きなのですが、なかなか二人が付き合わないところがいいじゃないですか。
『歴史ゴーストバスターズ』も和子ちゃんとコオリくん早く付き合っちゃえというコメントがいっぱいくるんですけど、焦らされたい気持ちもあるんだろうなと思います(笑)。そのあたりの感覚は今も昔も変わらないんでしょうね。長期シリーズになると本当にカップルになるとかはあるんですけど。初期で付き合ってしまうとそれで満足してしまうんでしょうね。
門田:(キミノベル小説大賞の前に行っていた)ピュアラブ小説大賞時代から、1冊ものの恋愛ストーリーで素晴らしい作品を多数出させていただいているのですが、どれも人気が出ても続けられないのが残念で。1冊の完成度が高い、そういった作品も引き続き出してはいきたいのですが、今回の新人賞ではシリーズ化をぜひ意識して書いてほしいです。恋愛ものだと最後くっつかないで引っ張る感じでも、おもしろければOK。ただ、付き合うか付き合わないかだけの話だと、くっつかないとエンドマークを打ちにくい。だからこそ、恋愛とは違う軸をもう一本立てていただきたいです。
──今回特に求めている作品について教えてください
門田:かなり漠然としますが、小学生の読者がハマってしまう、おもしろい作品です。その作品のことを考えたら、一日中楽しかったり、つらいことを忘れたり。いま、読者もハマれるものを探している感じがあるんですね。なにかに夢中になりたいんだと思うんです。書き方として、入り口は日常にと限定しましたが、入ってしまえば可能性は無限です。キャラクターも設定も展開も、のびのびやってほしい。
──具体的に、書き手の方へのアドバイスなどはありますか?
松田:ある種フォーマットみたいなものができれば強いと思います。第1回受賞作の『マリ×トラ事件ファイル』(作:花井有人/絵:葛西尚)ではマリに届く相談事から話が始まるし、『歴史ゴーストバスターズ』なら悪霊化した人物が誰なのかを探っていく、というお決まりのフォーマットがあります。あとはシリーズを通して大きな謎があると、さらに読みたい気持ちになる。『歴史ゴーストバスターズ』なら、和子ちゃんがなぜ幽霊が見えるのかはまだ明かされていないんですね。
斉藤:普段本を読まない子でも読めるような工夫がほしいです。具体的には感情移入しやすい主人公の一人称にしたり、子どもが親しみやすい文体にする、一文を短く改行を多くする、などです。キャラクターの個性が伝わる話し言葉、決め台詞があるものも強いです。
読みやすさというのは言葉の難易度だけではなくて、テンポやキャラクター設定にも左右されます。物語の冒頭で読者の心をつかむ出だしを意識してほしいですね。
松田:例えば、恋愛ものだったらポエムから始まると惹きつけられますよね。序盤30ページぐらいで、こういうキャラクターが出てくる、こういうことが起こる、こういうことを目指して結末に進んでいく、というのがある程度つかめるものがいいかもしれません。
――冒頭だけ読んでみて買おうか悩む子どももいるでしょうね
斉藤:ある程度読んでから買うか決める子は多いと思います。文字だけの本をあまり読み慣れていない読者も多いので、最初にこれだったら読めそう、おもしろそうと思ってもらえる出だしがやはり大切になります。
ベタや王道を恥ずかしがらずに書いてほしい
松田:自分が子どもの頃どんなものをおもしろいと思っていたかを思い出してみるのはいいと思います。意外とベタや王道だったりもする。
門田:そうそう、突飛なことをやらなければ、と思うかもしれませんが、ベタや王道も大切ですよね。大人からすると見慣れている王道展開であっても、子どもからするとそれが最初の体験かもしれないからです。はずかしがらず、王道をしっかりやりきるのもいいと思っています。
──今回のポプラキミノベル小説大賞で出会いたい作家像を教えてください
斉藤:作家さんそれぞれに表現したい核みたいなものがあると思うんですけど、それを子どもの目線で展開できる方がいいです。まずは自分が子どもの時に何が好きで、どういうものを読みたいと思っていたか、どんなものに揺さぶられてきたか、自分はなぜ書いているのか、ということに向き合ってほしい。その上で、初めての出来事や感情を本のなかで追体験する子にも伝わるように表現していただけると嬉しいです。
松田:ご応募される方は、小学生の頃から大人向けのものを読んでいたりと本読みだった人も多いと思うんですが、そういう方は自分が子どもの頃こういうものを読んでいたという感覚だけで書くとちょっとズレが生じる場合もあるので気を付けてほしいところです。
──新人賞の投稿者によく見られる「そうじゃないんだけど」ということがあれば教えてください
斉藤:いわゆる児童文学作品、ジュブナイルとかノスタルジックなものはあまり求めていなくて、今回の賞では熱中できるようなエンタメに振り切ったものを求めています。
門田:さきほど子ども時代のことを思い出してほしいとは言ったものの、読むのは今の子どもだというのを意識してアップデートしたものにしてほしい。
──今後ジュニアノベルやそれ以外に個人的に注目しているジャンルなどはありますか?
松田:eスポーツとかプログラミングを楽しく学べるものを本でもできたらおもしろいんじゃないかなと思っています。僕が子どものころに『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』がすごく人気だったので、そのeスポーツ版みたいなものを児童文庫でできたら。
門田:手芸ものを今っぽくできないかな…と思っています。昔から手芸本を見るのが好きで……って、完全に自分の趣味からの発言ですが。
斉藤:多様性とかダイバーシティとか言葉にするとちょっと堅苦しいんですけど、そういうものをエンタメに落とし込んだもの、マイノリティやハンディキャップを持つ子が普通に登場人物の中にいるとか、その子が活躍するわけではなくて普通にいるみたいなものも読みたいです。
──最近のドラマで同僚に車いすの女性が映っていても、そのことはストーリー上、特に触れられていませんでした。映像だと説明しなくていいけど文章にすると説明が必要なので、さじ加減が難しい部分かもしれないですね
門田:文章の難しいところですね。ただ、そういうこともだんだん普通になってきているように思います。
斉藤:自分たちが育った頃よりも今の方が、両親のどちらかが海外出身だったり、家族全員が海外ルーツだったりということが一般化していると思いますし。
門田:子どもたちのほうが上の世代よりもニュートラルになっているのに、書き手は昔の固定観念で書いてしまう。家族はこういうもの、女の子はこういうものという昔の価値観や常識で書かれてしまうと違和感があるし、問題があるとも思ってしまうので、今の感覚を知ったうえで書いてほしいと思います。
──ほかのジュニア小説の賞と比べて、ポプラ社ならではの売りがありましたら教えてください
門田:選考するのが作家さんではなく編集部なので、完成度よりもパッションや可能性を重視します。
これは一般書の新人賞も同じなのですが、自分たちで選んで推していくというポプラ社の伝統というか、ポリシーかもしれません。編集者がこの人とやりたいと思った人を選ぶのでうまくいくことが多いんです。
松田:あとは、キミノベルに限った話ではありませんが、児童文庫はすごく感想が来るんです。これは文芸の編集をしていた頃にはあまり味わえなかったことです。感想ハガキだけでなく、ファンレターとして封筒で送ってくださる読者さんもいますし、ホームページにもたくさんコメントが来ますね。
──ハガキを送ることが今減っているから、こういうのをもらえるのは素晴らしい経験ですね
斉藤:子どもは読んでおもしろかったからその気持ちを伝えたいという気持ちが強いんだと思います。
松田:キミノベルのHPにはイラスト投稿の機能もあって、それはうちの特色です。
──最後に、作家志望の書き手に向けて、メッセージがあればお願いします
門田:いろいろと踏まえてほしいことはあるのですが、こんなこと書いたらおかしいんじゃないかとか、突拍子もないような今まで書いたことある人がいないようなものでもトライしやすい自由な土壌がありますので、ぜひチャレンジしてほしいなと思います。
児童書は人が本と仲良くなれるかどうかを決める可能性があります。子どもの時に読んで好きになった本は、一生心の中の友達になります。そんな本を書いてみませんか? ご応募をお待ちしています。
(インタビュー・構成:monokaki編集部、写真:鈴木智哉)
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