対象読者は書店の文庫の棚に来る人|宝島社×エブリスタ「『この文庫がすごい!』大賞」連動、特別インタビュー |五軒目〔前編〕|黒澤 広尚
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対象読者は書店の文庫の棚に来る人|宝島社×エブリスタ「『この文庫がすごい!』大賞」連動、特別インタビュー |五軒目〔前編〕|黒澤 広尚

「創作居酒屋」そこは編集者・作家・書店員・漫画家・イラストレーター・サイト運営者・読者など分け隔てなく、書籍業界にかかわる人々が集まり、創作論を語り合う居酒屋である。

エブリスタで開催される「『この文庫がすごい!』大賞 」、エブリスタ開催の宝島社コンテストとしては2015年に開催された「『このマンガがすごい!WEB』”専門店”マンガ賞」以来6年ぶりの開催となります。発表するなり多くの反響をいただいていますが、今回は「宝島社文庫」の魅力を、皆様にお伝えしていきます。

今回のゲストをご紹介いたします。

■今回の来客
宇城卓秀 様(株式会社宝島社 書籍局第4編集部 編集長)
代表担当作:響け!ユーフォニアム、木曜日にはココアを、異世界居酒屋「のぶ」シリーズ

鷹樹烏介 様 (作家)
代表作:新宿警察署特殊事案対策課シリーズ(宝島社)、警視庁特任捜査官グールシリーズ(宝島社)、第四トッカン 警視庁特異集団監視捜査第四班(双葉社)

森崎緩 様(作家)
代表作:総務課の播上君のお弁当 ひとくちもらえますか?(宝島社)、隣の席の佐藤さん(一二三書房)

※今回のインタビューはオンラインにて開催いたしました。

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『この文庫がすごい!』大賞 」は絶賛応募受付中!

「 『カテエラがない』というだけでも素晴らしい間口の広さだと思います」(鷹樹)

――皆様お久ぶりです。早速ではありますが、自己紹介も兼ねまして、代表作のご説明をいただきたいのですが、鷹樹先生も森崎先生もWeb小説から書籍化されていますよね。
それぞれ今回のコンテスト表紙にもなっている2タイトルである『総務課の播上君のお弁当 ひとくちもらえますか?』『ガーディアン 新宿警察署特殊事案対策課』 について、執筆し始めたきっかけをお教えいただけないでしょうか?

鷹樹:自分がWeb小説サイトに投稿したのは5年前になります。もともとは読み専だったんですが、当時は時間があったので書き始めてみたのがきっかけです。
実際投稿してみたら、読者評価がつかないどころかそもそも読まれない状態でして、きっとシステムの不具合だと思って運営問い合わせたのですが、実は読まれていないだけだったといった状態でした。
ですから、コンテストに応募した時も、正直なところまったく受賞するとはおもっていなかったです。
最終選考には残っていたのですが、受賞発表のときは家族と旅行にいっておりまして、帰ってみたらメールがたくさん届いていたという状態でした。その『退魔の盾』を『ガーディアン 新宿警察署特殊事案対策課 』と改題したものが宝島社文庫で2018年に書籍化されて、デビューできました。

森崎:私は最初個人ホームページで小説を掲載していたのですが、人がなかなかこなくなったので盛り上がっていた小説投稿サイトに作品を掲載したのがきっかけです
ただ、ふだん書いている小説のジャンルが、コンテストの募集内容にあてはまることが少なかったので、応募ジャンル規定が特にないコンテストに応募しました。
そこで受賞したのが『ランチからディナーまで六年』 (書籍版タイトル:『総務課の播上君のお弁当 ひとくちもらえますか? 』)です。
実はデビュー作はコンテストを受賞したものではく、その前にライトノベルでデビューしていたんですが続かなかったので、コンテストを通して改めて文庫版として出せたことはうれしかったです。

――ありがとうございます。お二人は受賞されただけではなく、受賞作が多くの方の手にとっていただけているということで、これから応募される方にとっては目標にもなると思います。皆さまが応募するきっかけになるためにも、宝島社文庫の魅力や、受賞して変わったことなどあれば教えてください

鷹樹:宝島社文庫の魅力については「間口の広さ」が一番であると思います。
正直なところ、私は流行の異世界・転生といったものは書けなかったので、普段自分が読んでいる作品からアイデアを得て書きました
他の受賞作を見るとライトノベルテイストの作品も多かったですが、Web小説界隈では決してメジャーなジャンルではない「警察小説」をピックアップしていただけたことはありがたかったです。
閲覧数がほとんど0だったマイナージャンルの作品を選んでいただけたので(笑)。カテエラ(カテゴリーエラー) がなかったというだけでも素晴らしい間口の広さかと思います。
受賞して変わった点という意味では、お陰様でたくさん応援いただけたようで、宝島社文庫様でも新シリーズ含めてシリーズ化させていただいていますし、その他もいろいろと書かせていただけることになり、お仕事の御相談を継続していただけていることが一番変わったことかなと思います。

森崎:私も、宝島社文庫の魅力の一番はコンテストの間口の広さだと思います。
私はデビュー作が少女小説だったのですが、Web小説サイトではそれほど有名なジャンルではなく、注目もあまりされませんでしたが、宝島社様はNG事項が少なく、自然に書かせていただいていることが大きいかなと思っております。
デビューして変わったことは、正直なところ自分ではそれほど反響は感じていないのですが、重版していただいたことはうれしかったです。

宇城:はい。『総務課の播上君のお弁当』、おかげ様で好評いただいておりまして、12月に新刊が出る予定です。

※「お弁当男子シリーズ」第2弾!
宝島社文庫「総務課の渋澤君のお弁当 ひとくち召し上がれ」 著/森崎緩 装画/くにみつ 2021年12月7日発売予定です!


「宝島社文庫はそもそもエンタメ小説を出すためのレーベルなので、 ジャンル関係なく面白ければ受賞の可能性があります」(宇城)

――ありがとうございます。今回は質問募集をしましたので、そちらの回答も随時おこなえれば思うのですが、最初に今回注目キーワードとして「ほっこり」「グルメ」「契約恋愛」「契約結婚」「警察」「犯罪」というキーワードを注目として挙げていただきましたが、キーワードの設定した意図、宝島社として期待していることがあれば教えていただけないでしょうか?

宇城:キーワードに関しては、シンプルにそういった性質を持った小説の需要が高い、より受け入れられやすいといったところが大きいですね。

――なるほど。ちょっと質問を先取りするのですが、例えば「グルメ」と「警察」をあわせた「グルメ警察小説」なども問題ないのでしょうか?
また、今回挙げていただいたキーワード以外の作品はどういった扱いになるのでしょうか?

宇城:まったく問題ないです。むしろ挙げさせていただいたキーワードに限らず、「このジャンルとこのジャンルがくっつくのか!?」と思わせていただけるような作品を待っています。
二つ目の質問の答えとしましては、今回は現状の市場のヒントとしてキーワードをあげさせていただきましたが、宝島社文庫はそもそもエンタメ小説を出すためのレーベルなので、 ジャンル関係なく面白ければ受賞の可能性があります
元々は「『このミステリーがすごい!』大賞」の受賞作などのミステリー作品が中心になりますが、七月隆文さんの『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』、 武田綾乃さんの『響け!ユーフォニアム』、青山美智子さんの『木曜日にはココアを』などのような恋愛小説や青春小説などもありますし、蝉川夏哉さんの『異世界居酒屋「のぶ」』のような ライトノベルを一般文庫化した作品もありますし、時代小説もあります。対象読者は書店の文庫の棚に来る人なので、幅はかなり広いです

――お二人の先生もおっしゃられていますが、「エンタメ小説でノンジャンル」という間口の広さは、テーマを絞りがちなWeb小説サイトでのコンテストと大きく違う点かと思います。応募される方はぜひ参考にしてくださいませ。
そろそろ皆様からいただいている質問にうつっていきたいのですが、まずは大きめのご質問として、昨今のコロナ情勢下で書籍市場はどのように変わってきたでしょうか?

宇城:一時期は休業される店舗さんもあり、厳しい時期はございましたが、その分ネット販売や電子書籍もあり、それほど大きな影響は受けずに済んでいるのかと思います。作品制作という点では、 影響としては、オンラインでの打ち合わせがふえたかなと思います。
もともと遠方の方とは電話やオンラインが中心でしたが、今回は近郊の方ともそうなりました。時間効率はよくなりましたが、ちょっとしたことでお会いできなくはなったのは残念ですね。そこはおさまっていくにつれて徐々に戻っていくとは思いますが。

鷹樹:私も今回からリモート環境を整えました。これまで正直リモートの打ち合わせはしたことがなかったですが、資料をみながら打ち合わせができるので、やりやすくなった部分もありますね。

――それでは次の質問ですが、「ひとつのジャンルに特化している作家と、幅広いジャンルを書ける作家でしたら、どちらが作家として生き残れますか?」ということに関してはいかがでしょうか?

宇城:幅広いジャンルで面白いものを書けるにこしたことはないですが、無理して得意ではないジャンルに挑む必要はないと思います。 そのとき売れるジャンルであっても、オリジナリティとかその作品ならではの強みが欲しいですよね。
また、需要がなさそうに見えても、舞台や設定を変えたりするだけで面白くなる、届きやすくなることはあります。我々が少し変えてでも頑張ろうと思えるほど魅力ある作品であればご一緒したいですね。
商業化といっても、記念出版でいいのか、それとも作家としてやっていきたいのかということもあります。一冊だけ企画を通すのであれば、流行ジャンルである方が通しやすいのは事実です。ただ、無理にひねり出した作品はその先が難しいと思います。
一冊だけ出して終わりというのは寂しいところはあります。できれば継続して仕事をしていきたいですし、書き続けることで技量が上がっていきます。そういう意味で言いますと、その作家の方がもともと持っているもの、強い部分を引き出していった方が続けやすいと思います。

――こちらもジャンルに関するものですが、『売れるジャンルの作品と需要があまりないけど面白い作品だったら、どちらを商業化しやすいですか?』という質問です

宇城:「売れているジャンル」「売れていないジャンル」というのも言い方を変えますと、売れているジャンルというのは「そのジャンルで先行して売れている作品、いわばファーストランナーがいるジャンル」と言い換えられると思いますが、売れているジャンルで作品を出すときは、ファーストランナーとの差別化を出していくことが重要だと考えています。それがうまくできると、ファーストランナーを追い抜けないかもしれませんが、2番手、3番手ということで、いいポジションを取れることがあります。
逆に「売れていないジャンル」は、先行して売れている作品がないジャンルであるので、その作品がファーストランナーになれる可能性があるといえるんです。
『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』という作品があるのですが、恋愛小説にファンタジー要素を加え、しかも泣けるというジャンルは、当時あまりないジャンルでしたが、潜在的なニーズをつかみ、上手く読者の方にはまったことで、累計160万部をこえる爆発的なヒットになりました。
ファーストランナー、言い換えますと第一人者になれるということは、爆発的にヒットできるともいえます。そういった意味でも、今回はノンジャンルのエンタメ小説を募集させていただきます

――メジャージャンルでなくとも、作品の可能性を引き出していただけるというのは、作家の方にとってはとても心強いと思います。
鷹樹先生は先ほどの自己紹介でもありました通り、メジャージャンルではないところからのデビューとなりましたが、ご自身の強みはどういったところだと思われていますか?

鷹樹:警察小説やハードボイルド小説は死ぬほど読んできたので、相当インプットがあったのが一番でしょうか。書く時もニーズに合わせるというよりは、自分の好きなものを徹底的に書くようにしています
それが運よくピックアップされたので、これから応募される方もカテエラだからと考えるのではなく、どんどん応募してください
私も実際閲覧数0の小説を書いていたので。「運」と、今言いましたがどちらかといえば「縁」の方が近いですかね。

宇城:そうですね。そのジャンルを好きな編集との出会い、そのジャンルを好きな読み手の方、そういった「縁」、出会いは大切だと思います。

――「ノンジャンル」に対する宝島社文庫の熱いメッセージをいただきありがとうございます。今回のインタビューの予定時間の半分を、実質最初の質問使ってしまいました(笑)
後半は少し巻き気味にして進めつつ、いただいている質問にお答えいただければと思いますので、何卒よろしくお願いいたします

◎後編は、これから執筆されるかた必見!
「浮かんだアイデアをプロットに落とし込む方法」
「そもそも作品をどこから書き始めるか、アイデアをどこから出すか」
といったことを森崎先生、鷹樹先生にお答えいただいている他、エブリスタスタッフのTwitterアンケートで「ジャンルを知らなかった」という回答が4割を超えた「警察小説」にはどこから入門するのがよいかを鷹樹先生にご説明していただいています。

次回もぜひご注目くださいませ。
※後編は11月中旬に公開予定です


皆様からいただいたうち、インタビューに入りきらなかったご質問を掲載いたします

Q:推奨タグをつけた場合、そのタグの王道から外れたらマイナスポイントになりますか?
マイナスポイントになるならタグを外した方がいいでしょうか?

宇城:まったく気にしなくていいですので、キーワードはつけてください。
新人の方もたくさん参加するコンテストですので、加点法で見ていきます。というより、そんなに怖くないので、躊躇せずにご応募してください。

Q:応募する際に10~15万文字なくても、加筆できれば大丈夫とのことですが、頭の中にその構想があれば大丈夫ということでしょうか?

宇城:頭の中で加筆構想があれば、もう少しいえば「いわれれば考えるつもりはある」でも大丈夫です。
例えば連作短編であれば、ひとつの編があり、その内容が強烈に惹きつけられるものであれば、そこから先は担当編集と一緒に考えていくというのもひとつの方法だと思います。
連作短編でない、普通の小説で単純に10万文字に満たないというのは、連作短編に比べれば当然不利になりますが、「それでも出したい」と我々が思えるのであれば、採用される可能性はあります。

Q:文字数が長い作品にした方が受賞しやすいですか?  長ければ自然と密度が濃い原稿になるはずだから、できるだけ長く書こうと意識して執筆した方がいいですか?

宇城:正直長さだけあっても何も意味はないと思います。むしろ密度を意識して執筆するようにしてください

Q:宝島社さんが大好きです! 七月さんの本を買ってから、宝島社文庫を買い集めています。 いつも利用しているエブリスタさんでコンテストであるので、すごく嬉しいです。ありがとうございます! 来年以降も開催するかどうかは、今回の応募数や品質によって決めるのでしょうか? 毎年開催してほしいのでよろしくお願いします

宇城:ご愛読ありがとうございます!
できれば恒例にしていきたいので、たくさんのご応募お待ちしています。


宝島社×エブリスタ「『この文庫がすごい!』大賞」
対象:文庫で刊行することを想定した、エンターテインメント小説、ジャンル不問
応募枚数:20,000文字以上の作品(短編連作、未完結でも可。受賞した際には書籍一冊分(100,000~150,000文字程度)に加筆・改稿できる作品であること)
応募受付:2021年11月1日(月)~2022年1月31日(月)27:59:59まで
中間発表:2022年4月、最終結果発表:2022年5月予定
賞典:宝島社からの書籍化検討、受賞1作品につき10万円、優秀作品はエブリスタ編集部からの選評をメール送付
詳細:https://estar.jp/official_contests/159643

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