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最後まで一気に読ませてしまうWeb小説|海猫沢めろん

寒い暑い寒い暑い寒い暑い寒い暑い寒い暑い……。
みなさんお元気でしょうか。クーラーと外気を交互に浴びてサウナ状態の俺、めろん先生です!

調子はどうですか?
ここで、部屋で執筆しているみなさんにアドバイスです。
クーラーはかけていい。だけど下半身は冷やさないほうがいいです。下半身冷えると調子悪くなりますよ。
たぶん気の流れとかチャクラとかそういうやつのせいだと思うんですけど、とにかく下半身の防寒対策してあたたかい格好で執筆しましょう。
あと、むしろ逆に一回暑くしてみるのもいいです。風呂入ったら外が涼しく感じますからね。

そんなわけで、今回の一本目は夏なのに……さらにアツくなるこの作品から!

限りなくノンフィクションに近いアイドル小説

作品名: #ProjectTOKI ~新潟にアイドルの輝きを~
作者:板野かも
URL:現在掲載無

この街にアイドルを呼びたいと願った大人達がいた。この街でアイドルになることを夢見た少女達がいた。
名古屋、大阪、博多に次ぐAKB48グループの支店を新潟に作る――。人々の思いが一つに重なるとき、無謀とも言えるその夢が実現に向けて動き出す。 理想と現実、絆と軋轢、出会いと別れ。全てを乗り越え、少女達は羽ばたく。希望の翼を広げ、天を舞う朱鷺のように。
今ここに物語る、「NGT48」誕生秘話!

実在のアイドルNTG48を扱った作品です。

・仮に本作がコンテスト受賞、書籍化等に至った場合、作者はそれによって得られる全ての利益を新潟及びNGT48に還元します。

という但し書きも潔い。
アイドル個人だけじゃなくて、新潟市役所の人々、秋元康たち運営側の関係性も描かれており、これはフィクションなのか? ルポじゃないのか? と思うような真実味があります
作者の方のプロフィールを見ると、素人ではないのかな?

ぼくは生もののアイドルに疎くて、最近では自分が歌詞を書いた「虹コン」や、「でんぱ組inc」のライブを見たくらいなんですが、これを読んで、アイドルとそのファンの熱量に素直に感動させられました
ともかく地の文が圧倒的にエモい!!!!

 そう、今でも意味など分からないし、きっと分からないままでいい。それは神に捧げる呪文なのだ。敬虔(けいけん)なる信者達が声を合わせ、偶像(ぐうぞう)に神を降ろす祈りの祝詞(のりと)――。
「――虎(トラ)、火(ヒー)、人造(ジンゾー)、繊維(センイ)、海女(アマ)、振動(シンドー)、化繊(カセン)飛(トビ)除去(ジョーキョー)!」
「――虎(チャペ)、火(アペ)、人造(カラ)、繊維(キナ)、海女(ララ)、振動(トゥスケ)、ミョーホントゥスケ!」
 人々の祈りが一手に集まるとき、神の輝きは地上に顕現(けんげん)する。人にしてその身に神を宿す、選ばれし依代(よりしろ)――偶像(アイドル)達の身体を借りて。
 巨大な鉄槌(ハンマー)で心をぶち抜くような衝撃が、日陽の全身を震わせた。
 これが――
 肌を刺す音楽の振動とともに、弾ける歌声が鼓膜を叩く。華奢な肉体が舞台狭しと躍動すれば、玉散る汗が熱気を高める。
 衣装の裾(すそ)をひらりと翻(ひるがえし)、目まぐるしく入れ替わる隊列(フォーメーション)。一糸(いっし)乱れぬダンスの最中(さなか)、客席に振りまかれる視線(レス)の電撃。
 遥か銀河を旅した流星が、夜空に隕石(メテオ)の尾を引くように――
 見る者の心を丸裸にする笑顔の洪水。何者も逃れられぬ輝きの聖域(フィールド)!

往年のサイバーパンクを思わせる文体! そういえばウィリアム・ギブスンも『あいどる』って作品書いてるからそういうやつか!? 全編これだったらやべえぜ!
……と思ってたら、だんだんと読みやすい文章になっていったので安心しました(個人的にはサイバーパンクのままでもOKだったんですが)。

あとここ、

 ひとしきり笑ったあと、秋元は、最初から決まっていたかのような答えをさらりと口にした。
「じゃあ、北原を行かせよう」
「……北原里英ですか。いい子だとは思いますが、なんで」
 かつてSKEに兼任していたこともあるという彼女の顔を思い返し、今村が問うと、秋元はグラスの氷をからりと言わせて、彼を見てきた。
「アイツの心は今……闇の中を彷徨さまよっている」

ここの秋元康かっこよすぎる……。

一気に最後まで読んでしまったんですが、この小説すごい気になってます。
まだ零章が終わったところで、次は「第一章 NGT48飛翔編」が始まるようなのですが、期待してます!

いやあ……部屋の温度が上がってしまったので、クールダウンしましょう……
二本目は超ライトなショートショートです! これは読みやすい。


数分で読めるショートショート集

作品名:たらこのショートショート集
作者:たらこ

1話3分未満で読めます。話に関連性はないので、気になった題名から読んでください。

とのこと。
ひとつ数分で読めるショートショートが、なんと60本以上アップされています。
そういえば子供の頃に星新一のショートショートをよく読んだなあ、と懐かしい気分になりました。
このなかでぼくが好きな作品をいくつかあげると、

・「謎の雲」 星新一のあの名作を思わせる作品ですが、どの作品か言うとネタバレしてしまうので……。
・「テセウスの船」 タイトルでなんとなくわかってしまう人もいると思いますが、わからない人はググってみましょう。
・「ラミー」 ショートショートにだいたいひとつは入ってる、「フェッセンデンの宇宙」っぽい話。
・「戦争ゲーム」 「レディプレイヤーワン」見たあとにどうぞ。

毎日何本か気軽に読めるところがいいですね。
「嘘の診断書」のPVがすごく良いらしいんですが、内容を読むと……そ、そうか……みんな仕事辛いんだな……と泣けます。

というわけで今回は以上2本でした。

ところで、最近こんなツイートを見たんですよ。

次回、できればちょっとこのへんもピックアップしてみたいと思ってます!


……というような感じで、このコーナーでは、

・書籍化されていない
・とにかくなんだか気になる
・これは来そう/絶対来ない、けどヤバい

そんなWeb小説を紹介したいと思います。
これを読んでくれ! という作品があれば、自薦他薦は問いませんのでお知らせください。ひっそり読みます!(読んでます)

「Web小説定点観測」は毎月第3火曜日に更新です。
ではまた。

そうそう、謎の読書実況ユーチューバー「文豪さん」の「5分で読める読書実況」最新動画が更新されているみたいです。
執筆の合間にどうぞ。


*本記事は、2018年07月17日に「monokaki」に掲載された記事の再録です。