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読者をしっかりイメージした作品はおもしろい|「めちゃコミックオリジナル×エブリスタ コミカライズ原作賞」平田佳

20代~40代の女性を主な読者対象とした、「めちゃコミック」のオリジナルレーベル「めちゃコミックオリジナル」。女性が「つい読みたくなる」様々なテイストの漫画を制作しています。その「めちゃコミックオリジナル」とエブリスタの共同コンテスト「めちゃコミックオリジナル×エブリスタ コミカライズ原作賞」が開催されることになりました。
今回は「めちゃコミックオリジナル」の編集者の平田佳氏に漫画原作としてどんな作品が求められているのかということだけではなく、読者の共感を呼ぶ作品の書き方のコツなども伺いました。
自分の物語が漫画化されるチャンスです。応募開始は11月2日から、締め切りは来年の1月31日、これから書いても間に合います!

いろんなエピソードがあるほうが漫画にしやすい

――「めちゃコミックオリジナル×エブリスタ コミカライズ原作賞」を立ち上げたきっかけを教えてください

平田:エブリスタで小説を執筆している作家さんとめちゃコミックの読者層がどちらも20代から40代女性が多く、面白い作品が生まれるのではないかと思いました。

――特に求める作品像や、出会いたい作家像はありますか

平田:やはり読者層である20代から40代の女性読者にささる世界観を描く作家さんを見つけたいです。働く女性としての悩みや、適齢期の結婚や妊娠、日々の家事や家族など、その世代の共感できる悩みがうまく表現されている作品は「めちゃコミックオリジナル」が大事にしている「共感・リアリティ」とマッチするのではないかと思っています。
主人公は普通の人であるほうが誰が読んでも感情移入しやすいですね。作品の主人公は読者の分身となったり、「こういう人いるいる!」と親近感のわくキャラクターであることが重要です。

――コミカライズ原作になるような小説を書く際に気をつけてほしいことなどはありますか?

平田:漫画化することを考えると、モノローグだけだと絵にはしづらいです。気持ちに共感できたとしても、主人公が一人だけで喋っていたり考えていたりするだけだと漫画にしたときに面白さが出てこないかなと思います。
また、色々なエピソードが入っていて場面転換がきちんとあると、絵にしたときに変化がわかりやすくていいですね。

――たしかにそれは小説を書く方だと見落としがちかもしれません

平田:人物が多すぎても「この人だれだっけ?」となってしまうので、本筋に関係ない人はそんなに登場させなくてもいいかなと思います。
また、課金読者の人は早いペースでの展開を求めています。あまりにもゆっくりした展開だと読者が飽きてしまうので、できるだけ最初のうちに事件が起こると読者の心をつかみやすいと思います。

――ウェブ漫画は最初の1ページ目からばーんといきなり事件が起こりますよね

平田:つかみも大切ですが、大きな事件が起こるだけでなく、主人公が最初と最後できちんと成長して、悩んでいたことを自分で乗り越えることによって最終的に問題が解決する流れが良いですね。

――応募作を読むときは、まずどこに注目しますか?

平田:どんなテーマの話なのかというのが一番ですね。『一言で言えば、こういう作品です』というものがはっきり伝わってくるかどうかですね。かつ、そのテーマが「めちゃコミックオリジナル」の読者に合っているかどうか。この作品はどんな読者に読んでもらうのかを想定して書いているのかがわかりやすいとさらにいいです。


テーマがしっかりしているとタイトルがつけやすい

――テーマというと構えてしまう人もいそうですが

平田:難しく考えなくていいんです。書き手が何を伝えたいのかということです。例えば仕事と結婚で悩んでいるアラサー女子の問題でもいいんですが、そこがきちんと読者に伝わるかですね。
我々の場合は漫画を作っていると最後にタイトルを決めることが多いのですが、そのテーマがしっかりしているとすごくタイトルを考えやすいんです。

――めちゃコミックオリジナル作品のタイトルはどなたが考えていらっしゃるんですか?

平田:最初は作家さんと編集者さんでアイデアをもんでもらいます。そこであがってきた候補の中から作家さんには許可を取った上で、こちらで修正を加えたりしつつ最終決定をします。どういう話なのか伝わらないのはもったいないので、見ただけでどんな話なのかわかるタイトルを考えたいですね。しかし、テーマがぼんやりしていると「そもそもこの話ってどんな話だっけ?」となっちゃうことが多いんです。

――応募時に作品のタイトルは「めちゃコミックオリジナル」を意識して付ける必要はありますか?

平田:意識しなくても大丈夫です。ただ、コミカライズが決定したときに最終的には変える可能性があると思っていただけたら問題はないです。

――ジャンル不問とありますが、どんな意図があるのでしょうか?

平田:女性向け作品ですと恋愛ものが多くなるとは思いますが、恋愛もの以外を読みたい女性読者もいます。そういうこともあり、特に縛りはなくてもいいのかなと思っています。
「めちゃコミック」のサイトでは、女性向け作品は「少女ジャンル」と「女性ジャンル」に大きく分かれています。前者は王道のキュンキュンする恋愛ものがメインですが、後者は大人の女性の恋愛だけではなくドロドロの人間関係や夫婦の悩みに関するものなど、いろんなものがあります。できれば、「女性ジャンル」に入るものがいいですね。

――女性の悩みに寄り添ったものが良いということですね

平田:はい、あと最近だと「こういう嫌な女いるわ~」みたいなものもありますね。主人公が嫌な女でなくてもよくて、登場人物にすごく嫌な女がいるようなものでもいいですね。
また、登場人物の心理描写だけで読者をずっと引きつけるのは難しいんです。例えば、「夫が浮気しているかもしれない。相手は誰かと思ったら、ただの不倫ではなく親友が仕組んでいたものだった。」というような、読者が「このあとどうなっちゃうんだろう」と思うようなサスペンス的要素もあったほうがいいですね。

――先を見たくなるような引っ張る力ですね

平田:そうですね、どこかハラハラする要素があるといいなと思います。

――登場人物の悩みを描きつつ、並行してこの先どうなるの?という構想があると漫画としてより面白くなりますよね

平田:王道なストーリーでもどこか個性は欲しいです。その作品ならではのポイントを作ってくれると嬉しいです。突飛な設定でも気持ちの面で読者が共感できるところは作ってほしいです。


設定を深堀すると登場人物のリアリティが増す

――お話を伺っていて、登場人物が抱えている悩みにリアリティがあることがポイントかなと思いました。リアリティって具体的にどういうことなんでしょうか?

平田:例えば仕事が出てくる場合は、仕事の内容を深堀してほしいです。
どういう会社に勤めていて、どんな人と仕事をして、どんな取引をしているのか、という部分までしっかり考えておいてほしいです。作品の中では描かなくても、そこまで考えているとキャラたちの会話の内容の説得力も出ますし、発生するトラブルひとつをとっても、その内容にリアリティが出てきます

――登場人物のバックボーンをきちんと考えているのかどうか

平田:そこがポイントだと思います。なぜその仕事を選んだのか、という所まで掘り下げていくと仕事に対する思いも出てきますよね。

――主婦の場合のリアリティはどうですか?

平田:夫婦あるあるが詰まっているといいですね。あとはアイテムとかも身近なものが出てくるといいです。アイテムというのは持ち物だけではなく、どこに住んでいる家族で、どういう世帯年収で…といった設定も含みます。

――たしかに郊外で駅から15分住みと都内で駅から徒歩5分住みだとぜんぜん違います

平田:そうですね。東京なのか東京の郊外なのか、地方都市なのかでもぜんぜん違うと思いますし、東京の3LDKと地方の3LDKも全然違うだろうし。また車を持っているか持っていないか。
あとは子供が通っている学校が公立か私立かで出てくる悩みも変わってくると思うんですよ。公立だったら例えば保護者同士のトラブルとか、私立だったら無理して私立に入れたばっかりにお金の問題があって夫婦で揉めてしまう、というようなことも考えられます。そういう設定を色々考えてキャラクター像が出来上がっていると、本当に起きそうな事件が浮かんでくるんじゃないかなと思います。
作中に書き込まなくていいんですけど、作家の頭の中に、登場人物の年収や住んでいる場所などの設定があるとコミカライズする時に聞かせてもらって絵にしやすいです。

――読者の共感を呼ぶ作品を書くコツなどありますか?

平田:普通の平凡な主人公なのに「こんな考えになる?」と10人中9人が思ってしまうものは共感しづらいですよね。そのキャラクターだったらこう考えるだろうなと納得できるものだったら共感しやすいですよね。
学生時代の女の子同士のすごく微妙な空気のいじめや友達とギクシャクしちゃう雰囲気とか、思春期の親との関係性とか、誰もが経験したことあるシーンがあると読者からの共感を得られやすいです。
あとは、何かしら足りない部分があるキャラクターが共感を呼びやすいですね。表向きは完璧に見えるけど、ちょっと弱いところがある。主人公に限らずヒーローでも、完璧な王子様に見えても、どこか人間っぽい面が見えると一気に親近感がわきますね。

――こういった作品は最終選考には残せないなというものはあったりしますか?

平田:すごいアクションものや、SFチックな話だと「めちゃコミックオリジナル」の読者層とはズレてしまうので、別の媒体で応募してもらったほうがいいかもしれません。


息抜きできる「夢が見える」漫画を読者は求めている

――今後来そうなブームはありますか

平田:逆に新たなブームを作って欲しいです。これまでは我々はトレンドを追いかけてきたので、新しい流れをぶっこんでほしい。これまでにない売れ筋を作るような、そんな作品を期待しています。

――時代によって読者の興味の変遷は感じますか?

平田:Web漫画の広告の規制の変化によって売れ筋が変わってきた節はあります。昔は恋愛ものでも過激描写のある作品が多かったのですが、最近は大人同士の恋愛だけどカラダの関係になかなかすすまない、色々なエピソードや事件が入りつつも2人の関係はじっくり進む作品、心理描写重視のものが増えてきています。あとは夫婦ものが増えた感じがします。

――読者が年をとって結婚して、それに伴って、ということもあるのかもしれませんね

平田:そうですね。読者層の人達にアンケートを取ったことがあるのですが「漫画では夢を見たい」といった意見も多く、彼女たちにとっては漫画は息抜きとして空いた時間に読むものみたいです。
めちゃコミックはライトユーザーが多いので、漫画が好きというよりは息抜きとしての需要が高いです。なので夢の部分がほしいみたいですね。
あまりにも展開がドロドロしすぎていると疲れちゃうんですよね。それで作品の途中で読むのを離脱してしまう人もいます。現実もツライのになんで漫画でも…ってなってしまう。だから、悩みを描いた作品でも、ちょっとしたキュンとするエピソードとかちょっと心が安らぐ要素があるといいのかなと思います。

――最後に、プロをめざす書き手に向けてのメッセージがあればお願いします

平田:奇をてらわず起承転結をしっかりつくっている作品は誰が読んでも面白いものになると思うので、基本に忠実に書いてみるのも大事だと思います。
あとは読者をしっかりイメージしてほしいです。読者を置いてきぼりにすることなく、誰にどんな気持ちで読んでもらいたいかを考えて、このシーンを読んで笑ってほしいのか泣いてほしいのか、などを考えながら書くといいんじゃないかなと思います。
面白い作品は基礎や構成がしっかりしているのでどんどん読んじゃいます。最初に主人公のキャラクターを見せて、抱えている問題を見せる。その問題を巡る事件が起きて、主人公は落ち込んだり無力を感じるけど、最後はしっかり乗り越えていく。という動きがあるといいですね。

(インタビュー:松田昌子、構成:monokaki編集部)


めちゃコミックオリジナル×エブリスタ コミカライズ原作賞
部門:
ジャンル不問(20代~40代の女性を主な読者と想定したコミカライズ原作)
応募枚数:30,000文字以上(短編連作も可)
選考:エブリスタ編集部+アムタス編集部
締切:2021年1月31日(日)
発表:2021年5月予定
賞:めちゃコミックオリジナルからのコミカライズ検討+めちゃ犬ぬいぐるみとお散歩バッグ 受賞一作品につき10万円 優秀作品にはエブリスタ編集部から選評メール
詳細:https://estar.jp/official_contests/159482