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このまま死にたくないなぁ、と思った|わたしがWebで書く理由 vol.01

あなたは、Webに文章をアップしていますか?
あなたが書いている理由は何ですか?

小説をサイトに投稿するかどうか迷っている人、
小説を投稿しているけれどモチベーションが下がっている人、
小説投稿が大好きな人まで、
小説を書いてWebにアップすることがどれだけ素敵な経験になり得るかをシェアしたい気持ちからはじめた連載です。

小説投稿サイト「エブリスタ」10周年企画「思い出のエブリスタ作品」に寄せられたエッセイから、「書く人」の「Webで書く理由」を書いた作品をピックアップ。

第一回は、思いもよらぬ転機から小説投稿サイトをはじめた美空 江さんのエッセイです。


私が踏み出した一歩/美空 江


はじめの一歩

 子供の頃から物語が好きでした。
 色々読んでましたが、一番影響を受けているのは子供用の古事記でしょうね。

 イザナギ、イザナミの夫婦神やその子の中でもヒルコ神、火の神、三貴神のあれやこれやは子供心に神秘、冒険、残酷、艷事、理不尽とドキドキする事満載でした。

 けれどその頃は読み専です。
 とにかく好きなものを読んで読んで、視力を悪くして怒られました。

 小学生の頃は漫画家になりたいと言っていた様な気がします。
 しかし自分の服飾センスのダメっぷりに撃沈して『あ、無理』と諦めてしまいました。
 でも絵を描くのは好きなので、美術部に入ったり、友達と落書帳を見せあったりと楽しく小学生時代を過ごしました。

 落書きしつつも文字が増してきたのは中学です。
 出来の良し悪しは置いておいて、書きなぐるようにレポート用紙をつぶしていきました。
 原稿用紙じゃお金がかかってしようがなかった、とも言えます。

 今も手元にありますが、これは一種の黒歴史的こっ恥ずかしさがあふれる品々ですね。
 ネタ帳でもあるのですが、当時のセリフまわしが恥ずかしくて直視できず、必要箇所だけ確認すると早々に閉じて棚に戻します。

 無理です。
 全力疾走したかのようにゼハゼハ言いたくなる気分で恥ずかしい。

 後、五年か十年したら破棄します。
 絶対。
 当時の日記帳と一緒に燃やします。
 もしくは火葬のお供として箱詰めです。
 絶対にダメ。
 恥ずか死ねる。


おそるおそるの二歩目

 中学からは完全に文章に傾きましたが、それを雑誌投稿したのはただ一度きりでした。
 今のようなネット投稿ではなく、原稿用紙に手書きです。見事なペンダコが出来ましたがやはり落選。
 まぁ、自分で読み返したら『これはアカン』というぐらいに読みにくいものですから致し方なしです。
 ただそれをバネに頑張る根性が私には備わっていなかったので、後はひたすら書くだけで、第三者に見てもらう欲求は希薄なものでした。

 成人してから数年は、仕事と図書館、本屋以外では外に出ないような非社会的生活を送り、親に言われた『伝書鳩みたいだね』という言葉にも傷つくどころか納得しきり。
 まっとうなOLではないよね。

 そんな折り、出かけた先の空き時間にポメラの初期機でポチポチと作文していた私の手元に興味を持った姉の友人がその文面を軽く流し読みした後『面白いね! 読ませてほしいな!』と、言ってくれたのはまさに青天の霹靂。

『え!?面白い?本当!?』

 気分は森の小人のダンス状態です。
 それからは他にもう一人加わり、読んでくれる二人のためにだけ書きました。
 仕事しながらの遅筆で、その物語はまだ完結していません。
 ごめんなさい。


ジャンプ所じゃなかった三歩目

 そんな風に楽しんでくれる人を得たからネット投稿サイトにも少し興味は向きましたが、やはり度胸がなくて何年も手を出すことはありませんでした。

 それがひっくり返った大事件。


 車に追突されて空を飛びました。


 身動きすら出来ない中、泣いて痛いと叫ぶしかできずに冬の道路にただ横たわる事は恐怖でした。
 自分の状態がさっぱり分からず、血は吐いてないから内臓は無事みたいだけと、明らかに骨はダメだって分かる痛みでした。

 結果、全治三ヶ月のリハビリ約一年でようやくぽてぽてと小走り出来るようになりました。
 でも入院最初は完全寝たきり介護要で、このまま二度と立てなくなるのではないかと滅入ったものです。
 その一週間の間です。
 しみじみと思ったのです。
 寝たきりにはなれない。
 あのこっ恥ずかしさ満載のネタ帳、日記帳を始末していない。
 早く立てるようにならなくては!と。
 そしてともに、死ねば今まで書いた物語は影もなにもなく消えるのだと心底さみしく思いました。

 そうだ。
 別に本にならなくたって、投稿サイトに載せればそこが閉鎖されない限り残るじゃないか。
 誰か一人でも、姉の友人のように『面白いね!』と、読んでくれる可能性が残るじゃないか。

 そして退院、リハビリ後にエブリスタへと飛び込んだのです。


煌めく星にステップを

 実際には踊ってませんよ?
 せいぜい『ひゃっほーい♪』と心の中で快哉しているぐらいです。
 でもスターをもらったり本棚に追加してもらったりするとそんな心地です。

 あぁ、これで万が一に、もう一度空を飛ばされたとしても、そのまま天の彼方まで魂飛ばそうとも、少なくとも天地神話のあの子達は闇に葬られる事はない。

 後は中高年に起こりうるポックリ死がもしも訪れたとしても大丈夫なように、微妙なネタ帳と日記帳を始末しよう。
 それと平行して天地とは別系統の物語も完結させなくては。

 成人式ではなく、定年までの年数を数える方が近くなるほど生きてますが、夢見る気力はまだあります。
 私にとって『エブリスタ』とは、幼少、学生時代にみた夢の実現であり、社会人の根性試しであり、現在ではある種の終活なのかもしれません

 まだやめる気はさらさらないですけどね!
 天地だけでなく、人に見せても(羞恥に)耐えられる作品はまだありますからね!(二作ぐらいは)


美空 江


第二回は、6年間手元で書き続けていたキャラクターをWebにアップしてみた作者様のエッセイです。お楽しみに!

「monokaki」は、エブリスタが運営する「物書きのためのメディア」です。