1660件の感想・レビューを書いた人物|教えて! ヘビーユーザーさん|エブリスタ作家インタビュー
monokakiの運営母体・エブリスタの10周年特別企画「教えて!ヘビーユーザーさん」。
小説投稿サイト・エブリスタをハードに使いこなしている方に、サイトの魅力、書き続けられる秘訣、投稿サイトの役立つ使い方など、創作に役立つ事柄をお伺いします。
今回突撃したのは、サイトに投稿された作品に感想・レビューを大量に書いている「うたうもの」さん。自身もコンスタントに作品を執筆しながらも、これまでに1660件以上もの感想・レビューを書かれています。
1日1件書いたとしても単純計算で4年半。いったい何が彼を駆り立てているのでしょうか。
なかなかレビューがもらえなくて悩んでいる人も必読です。
レビューは自然なコミュニケーションの延長
――非常にたくさんのレビューを書かれていますね
うたうもの:私としては多く書いているという意識はなくて、1600件以上と言われてもいまいちピンときていませんね(笑)。クリエイター同士のつながりの延長として、レビューやコメントを自然に書いているというのが実状だと思います。
――評論のようなイメージのレビューではなく、交流の延長なのですね
うたうもの:私自身が、作品に対してレビューやコメントをいただいたときにとても嬉しいので、よい作品を拝読したときに、作者への敬意や応援も込めてレビューや感想、コメントを書かせていただいております。レビューやページコメントのやりとりの中で、クリエイター同士の交流も生まれることがありますので、積極的に書いています。また、そのようなつながりの中で、クリエイター同士でイベントを開催して、イベントの中でそれぞれの参加作品にレビューをしあうことも多いです。
考えを共有できる嬉しさがある
――うたうものさんのレビューを拝見すると、作品の内容に深く切り込んで評したものから、作者さんへのご挨拶まで、幅が広いです。交流要素が強いというのがポイントですか?
うたうもの:あたたかい交流ができるということですね。他サイトと比べても書き専、読み専、絵師と関係なく交流が多いです。例えば誕生日に描いた絵を送ったり、企画をして同じテーマで作品を一緒に投稿したりしてます。すごく力量がある人たちが集まってきてお互いに刺激しあって切磋琢磨できる場所です。30代ぐらいから、上は70代ぐらいの方まで幅広くやりとりをさせてもらってます。
――レビューが1660件というだけでも凄いですが、さらに仲間との活動も精力的にされているのですね
うたうもの:短編コンテストに合わせて2週間に2・3回くらいはレビューをコンスタントに書いています。また、年に3・4回、クリエイター同士のイベントに参加したり、私自身が主催したりしますので、そういったときに集中的にレビューを書いております。それとは別に、自分の執筆も休日に書きます。集中して書きたいほうなので、書き始めると5時間ぐらい書いていますね。
――交流、レビュー、執筆の中でどんなときに喜びや嬉しさを感じますか?
うたうもの:クリエイターの仲間と一緒に同人誌などの形にできたときは嬉しかったです。あとは交流して話をしたり、考えを共有できたとき。以前は、あまりわたしと同じような考え方をする人間はいないと諦めていた部分がありました。自分自身は見方がひねくれているので、他人に理解されない部分も大きいと思うけれど、それでもある程度同じような視点で話ができて交流できるのがすごくうれしいです。
相互狙いは意外と少ない。優しい創作仲間たち
――「つながりのある人にレビューを書く」と聞くと、相互レビュー狙いなどの良くないイメージを抱く人もいます
うたうもの:作品を読んでもらいたい意識が強い人はそんなに多くはないです。「私の作品見てみて!」という人は少ないように思います。「あなたの作品を読んだから私のも読んでください」みたいな相互問題は昔ありましたが、今はそこまではない。マナーのいい穏やかな人、優しい人の割合が高いです。
――執筆の腕を磨くという観点だといかがですか? 優しいだけだと向上しない、というご意見もありそうですが
うたうもの:どうでしょうね。それぞれの書き手によってベクトルが違うとは思います。ただエブリスタで活躍している人はレベルが高いと感じます。ジャンルごとでも雰囲気が違いますが、私はエブリスタで好き勝手しています。最近はやりたい表現ができていますね。コンテストも一時期精力的に出していましたが、最近はこだわらないようになってきました。
――コンテストにこだわらなくなった理由は?
うたうもの:書籍化しているクリエイターさんともよくやり取りをしていますが、そういう人たちが自分の作品を見てどう思うのかのほうがおもしろいです。すごい角度でのご感想をもらえたりします。作品のクオリティが高い人たちは、他人の作品に対する視線もすごいですね。一歩先を行ってます。
――仲のいい人たちとはどこで出会ったのですか?
うたうもの:私はありがたいことに、作家同士のつながりから輪に入れてもらえたような形です。特別なことはしていないですね。
人となりが伝わるエッセイから入るのもおすすめ
――他のクリエイターさんから学ぶことは大きそうですね
うたうもの:エブリスタでちゃんとした文章を書ける人は、その人格が表れるようなものを書いていると感じます。最近は、小説を書きたいというよりも、エッセイで表現しつつ他の方々と交流するのを主流にしている人も増えてきました。
――小説と並行してエッセイを書かれている人も多いですね
うたうもの:エッセイだと柔和な表現や、笑える表現も多くなります。人となりがわかるので交流につながりやすいです。日記の延長のように定期更新もしやすく、書く力も鍛えられますしね。ものすごくおもしろいエッセイを書くクリエイターさんもいます。
――人となりがわかると、画面の向こうは人だということを意識しやすくなりますね
うたうもの:ウェブ小説家っていうとひとりきりのイメージがありますが、エブリスタだとひとりじゃないのがわかります。ひとりじゃないっていうのが強い。エブリスタのクリエイターさんを見ていると考えが変わりました。仲間がいるって感覚が芽生えやすい投稿サイトだと思います。
――自分がひとりじゃなく、画面の向こうの仲間と一緒だということはネットだとついつい忘れがちな部分かもしれません
うたうもの:レビューや感想は、相手への敬意を持って記入するという点が大事だと思います。気軽に言いたいことをつぶやける時代となりましたが、そのぶん見えない画面の向こうの誰かを傷つけてしまうリスクもあります。
曲がりなりにも言葉を扱う創作者として、言葉は便利ではあるけれど、扱いに十分気をつけなければならない諸刃の剣であるということを、常に言い聞かせながらこれからも真摯に感想を綴っていきたいです。
おわりに
批評やジャッジメントのイメージが強いレビューですが、うたうものさんの使い方は交流メイン、かつ相互狙いではないあたたかい形でした。
この記事を読んで、交流としてのレビューの使い方に興味を持たれた方、まずはエッセイから挑戦してみてはいかがでしょうか?
うたうものさんの自薦作品
がらくたもののパッチは、南国の小さな島で生まれた、とてもとてもめずらしい存在でした。パッチは仲間のノラ猫たちと楽しく暮らしていたのですが、ある日イタズラ猫のバラマがパッチにイタズラをしかけます。純粋なパッチはバラマの言葉を信じるのですが、果たしてその結末は。
「本作品は、童話シリーズ“がらくたもののパッチの冒険”の最初の作品です。
パッチは、がらくたに魂のやどった本来ならひとりぼっちになるはずの存在ですが、彼の純粋な魂が多くの仲間を引き寄せ、果敢に壮大な冒険に出るのです。
パッチは、作者自身の分身でもあり、あこがれでもある存在です。皆さんもパッチたちとともに、楽しくゆかいに大冒険をしてみませんか?」(うたうもの)