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6年間鳴かず飛ばずだった物語が、Webに投稿したら羽ばたいた|わたしがWebで書く理由 vol.2

あなたは、Webに文章をアップしていますか?
あなたが書いている理由は何ですか?

小説をサイトに投稿するかどうか迷っている人、
小説を投稿しているけれどモチベーションが下がっている人、
小説投稿が大好きな人まで、
小説を書いてWebにアップすることがどれだけ素敵な経験になり得るかをシェアしたい気持ちからはじめた連載です。

小説投稿サイト「エブリスタ」10周年企画「思い出のエブリスタ作品」に寄せられたエッセイから、「書く人」の「書く理由」を書いた作品をピックアップ。

第二回は、6年間手元で書き続けていた物語をWebにアップしたら思いもよらぬ展開が待っていた、あかつき草子様のエッセイです。 


なつき成長物語 ~私と「なつき」とエブリスタ


はじまり

 エブリスタに最初に投稿したのは、「なつき 泣き虫 七曲がり」です。
 私の作品の中で、一番の長編です。
 連載し始めた時、物語は一応完結していました。
 けれど、今の半分の長さでした。 
 今日は、そのお話をします。


「なつき」誕生秘話

 この際なので、「なつき」が誕生したきっかけを話します。

 その頃、私は小学校に勤務していました。
 お昼は、職員室で給食を食べます。
 事務職員の方と、学生の頃、今の自分を想定していたか話していたのだと思います。
「私ね、中学校の時、何か将来なりたい職業のアンケートがあって、それに『OL』って書いたんよ」
「じゃあ、ある意味、希望した仕事に就いてるんじゃないですか?」
「ほんとになりたいって思ってたんかな? それに、先生から呼び出されて『OL』は職業じゃないって、言われたんよね。何でやったかなあ」
 何でそんなアンケートがあったんだろう。
 それから、考え始めました。

 
 娘がちょうど、中学2年でした。『立志式』(※1)の実行委員になったと言っていました。ああ、立志式。私の時もあったあったと思い出しました。
 きっと、その関係で、将来なりたい職業を書いたりしたのだと推測しました。
 
 意識して創作を始めた頃で、題材を探していました。
 娘を見ていて、自分の中学生の頃のエピソードが浮かび上がってきたのです。
 公募を探すと、100枚の募集がありました。1章が10枚ぐらいで、10章書いたら、100枚になると単純に計算しました。
 仕事を定時で終え、家に帰る前に公共施設の自習フロアーに直行し、1時間集中して書く、という毎日でした。
 主人公の名前は「夏生」。タイトルは「なつき 泣き虫 七曲がり」です。
 物語は、立志式に向かって進みます。
 実際の生活でも、娘の立志式が3月半ばにありました。私の立志式の様子は記憶になかったので、娘の式を描写し、物語を終えました。


公募行脚

 応募し、結果を待ちました。
 惨敗です
 選評などもらえないので、どこが悪かったのかもわかりません。
 始めは三人称でした。
 けれど、心の声が多いので、これは一人称にした方がより心情が描けるし、スッキリするのでは、と切りかえました。
 周りの友人に、読んでもらったりしました。
 自分なりに推敲して、違う公募に出し直しました。
 またもや、落選です。
 それから、いくつ公募に出したか、覚えていません。

 落ちる度に、夏生たちをまたお蔵入りにしてしまったと泣きました
 あの子たちを自由に走り回らせてあげられない、自分の筆力の無さに泣きました。
 娘には、落ちた作品にしがみついてないで、新しいの書けば? と言われました。それもそうだとわかっていましたが、諦めきれなかったのです。

 選評がもらえる公募がありました。
 その中で「登場人物・結花の存在が中途半端でもったいない」とありました。
 結花ちゃん?
 中では、そんなに重要な人物として描いてはいませんでした。
 物語の起伏があるといいとあったので、結花ちゃんに絡んだ出来事を追加しました。
 
 他の公募で落選した作品を救済してくれる公募がありました。
 それに応募したところ、その編集部から、直接電話がありました。
「この作品を書籍にして販売してみませんか?」
 自費出版のお誘いです。
 正直、心は動きました。なけなしのお金をかき集めて、お願いしようかと思ったのです。
 けれど、お断りしました。
 それでもお誘いがあるということは、この作品に、どこかしら魅力はあるということではないか。
 そう自分勝手に解釈して、自信をつけたのです。
「なつき」を書き始めてから、6年近くたっていました。


エブリスタって? 初めての読者さん

 小説を投稿できるサイトがあるらしいとは、認識していました。
 今思い出そうとしても、なぜエブリスタの名前を知っていたのかわからないのです。
 他と比較したわけでも、投稿サイトを検索したわけでもなかったと思うのです。
 スマホで試しに、入力してみると投稿できました。
 それが、2018年の9月です。
 それから毎日、手元にある原稿をスマホでポチポチ入力しました
 その頃は、ジャンルごとの順位ではなかったので、30万位とかでした。
 300000位です。はあ? どれだけ作品が多くてどれだけ果てしないのかと、くらくらしました。
 それでも、どこかのだれかさんが読んでくださるのか、すこしずつ順位が上がっていきます。すると、また30万位です。どういうこと? と思ったら、月始めは全員、スタートラインに戻るシステムになっているようでした。

 ある時、ページコメント(※2)がつき、レビューをいただきました。
 初めて、目に見えた読者さんでした。
 菜子さんといいました。
 嬉しくて、手が震えました
 私の元からの知り合いというのでなく、純粋に作品を読んで、感想を直接届けてくれているのです。
 夏生が菜子さんの頭の中で動き回っているのだと、実感しました
 やっと、この子たちを自由に解放できたのだと、泣きました
 また、涙です。もちろん、これは嬉し涙です。


「なつき」の表紙! 夏生がビジュアル化!

「なつき」は、村の中学校の秋から冬の物語です。
 それで当初は、雪を被った冬の学校のグラウンドの写真を表紙にしていました。

 2018年の12月、びたみんさんという絵師さんが、キャラクターのイラストを描きますと、募集していました

 交流の無い方でしたし、びたみんさんもなつきを読んでくれているわけではありませんでした。それでも、サンプルの繊細で美しいイラストを見て、直感したのです。この人なら、夏生をイメージ通りに描いてくださる。私は、熱烈にお願いしました。幸い、一番乗りだったようで、引き受けてくださいました。それも、初めは1週間程かかると言われていたのに、1日で仕上げてくださったのです!

 でき上った夏生は、大きな目に涙をためて、今にも泣き出しそうなのをこらえています。私が依頼したのは、笑っている夏生でした。その時は、びたみんさんは作品を読み込んでくださったわけではなかったのに、夏生の本質をとらえてくれたのです。そして、それは作品としての「なつき」の表紙にふさわしいと感じました

 アップの夏生もいっしょにくださったので、私は自分のアイコンにしてしまいました。女子中学生の可愛いアイコンで申し訳ありません。年齢をかなり大幅にサバ読みしております!


原稿が終了。どうする?!

 2018年が終わる頃に、「なつき」の連載も終わろうとしていました。
 私のよくやる手法ですが、恋が今から始まるか? というところで終わります。もともと、「なつき」は、女子中学生の成長物語だと位置づけていました。恋はスパイス程度にしか思っていなかったのです。

 すると、作品のファン1号の菜子さんから、期待のコメントです。
「夏生の恋が気になります。続きを読みたいです」
 え……!? 
 原稿、もう無いんだけど。

 無いなら、書けばいいんでは? どこかで声がしました。
 もしかして、夏生たちに催促された? と感じました。
 そこからは毎日、1~2ページ書いては公開の日々が始まりました。
 実のところ学生時代は、恋心を秘めていたりはしましたが、お付き合いなどしたこともありません。それに、村の中学生の設定です。どうしようかと悩みました。
 けれど、続きを書き始めると、そんな心配はいりませんでした。
 不思議なことに、頭の中でちゃんと夏生たちが動き回っているのです。
 私は彼らを追いかけて、必死にメモを取っている感覚に陥りました。
 本当に会話しているのです。
 誰か、私の頭の中をビデオ撮影してくれ~! と何度思ったかわかりません。


「なつき」の連載を盛り上げてくださった方々

 2019年の1月を過ぎる頃、かなりの方が「なつき」を読んでくれていました。
その頃には、パソコンで入力し始めました。

 ぺコメ(ページコメント)で感想をいただくと、読者さんの感想がダイレクトに伝わります。
 実はそれで、エピソードを引き延ばしたり、入れ替えたりしたこともあります。
 それは、エブリスタならではの、生のやり取りだったと思います。
 
 2019年の2月には、それももともと原稿のあった「Full Color」という作品をコンテスト用に連載することにしました。けれど、2万字の募集です。1万2千字しかないので、それも原稿を足しながらです。
 
 今考えても無謀です。
 仕事をして、家事をして、2作の原稿を書いて連載していたのです。
 それも「なつき」は、女子中学生が主役です。喜怒哀楽の激しい女の子です。
 片や、「Full Color」は男子高校生が主役です。無理に自分を抑えたような、少し斜に構えた18才です。
 性格も性別も年齢も違いました。

 それでも、支えてくださったのは、当時読んでくださっていた方々でした。
 毎日のぺコメに励まされました。

 2月17日に「Full Color」が締め切りに間に合いました。
 そして、2月末の締め切りに向けて、「なつき」のラストスパートでした。
 その頃には、「なつき」は、10万字近くになっていました。連載当初から見ると、2倍の長さになっていたのです。

 2019年2月28日。
「なつき」のスター(※3)が500になりました。
 そして、ついにその日、完結したのです。


エブリスタの中で、更に研鑽

 連載中に、アドバイスをくださる方がいました。
 夏生が、国語の宿題で書いた作文を教室で読む場面があります。
 当初、その作文は、中身がありませんでした。
 けれど、ここは前半の肝になる。作文を書いた方がいいと言ってくださり、書きました。
 何度か、ダメ出ししていただき、今の文章になりました。

 「なつき」のメンバーをご自分の作品に登場させてくださった方もいます。それほど、入れ込んでくださったのかと、驚きました。

 なつきは、エブリスタで羽ばたいたのです!

 連載が終わって、3月は気が抜けたようになっていました。
 しばらくすると、ランキングはどんどん下がっていきます。
 これでは、応援してくださっていた読者さんに申し訳なくなってきました。
 トピックを探すと、作品を紹介する場所はたくさんあります。営業という言い方はふさわしくないかもしれませんが、読んでもらう努力は必要だと感じました。だれの作品でもない、自分の作品なのですから

 作品を紹介するトピックを通して、読んでくださった方と交流が生まれたり、その方が作品集に収めてくださって、また新たな読者さんに読んでもらったりと、すそ野が広がっていきました。

 私自身も、読者さんが始めたグループに招待されてサークル活動したりと、交友関係が広がっていきました。


夏生はあかつきではない

 さて、私の中学校の記憶をもとに、エピソードを書いたと申しました。
「OLは職業ではない」のエピソードは、出てきましたね。
 では他に、どれが本物のエピソードで、どれが創作かわかりますか?
 実は、立志式までのエピソードは、ほぼノンフィクションです。

 頭痛で医者に行き、注射でぶっ倒れたのも、勘違いの作文を書いたのも、結花ちゃんとエスケープしたのも、試験管でケガをしたのも本当です。準備室でピアノも練習していたし、吹部でスネアーをたたいていたのも本当です。高校の音楽科にレッスンにも行きました。
 お父ちゃんとバトルはしていましたが、大人になるまで、面と向かって落ち着いて話すことはできませんでした。

 そうです。

 よく、「夏生はあかつきさんですね」と言われますが、違います。
 夏生はいわば、私の理想形です。
 娘が私より陽気な性質なので、娘も入っています。
 中学生の頃の私は、もっと混沌としていて、浅はかでした。
 夏生は、ちゃんと物事を確認していると思います。それは、何十年もたってようやく私が見つけた、回答なのです

 さて、後半は、夏生の恋になります。
 実は、ここに出てくるキャラクターにはモデルがいます。
 かなり、個性的な面々だったことがわかります。

 恋に発展させなければならなかったので、成り行きで隆太が相手になっています。もちろん、それこそが、創作です。

 もし、本当に「なつき」が本になることがあったなら、私は隆太のモデルになった同級生に謝りに行こうと思っています。
 まあ、今でも作品は公開しているのですから、迷惑をかけていることに、違いはないのですが。

 では、ここで弁明しておきます。
 実際には、本当に何もありませんでした。
 彼が誰のことを好きだったのかも知っています。
 なのに、こんなふうに書いてしまって、すみません!


さらに、良い作品へ

 読んでもらうと、みなさんステキな感想やおほめの言葉をくださいました。情景や、心情の描写が繊細だ。夏生と周りのクラスメートのキャラクターがしっかり書き分けられている。そう言われて、嬉しく思いました。

 けれど、田舎の中学生の日常を追っています。特に後半は、短期間のことを事細かに語って、字数を費やしています。起伏が無く、中だるみに感じます。本来なら、そこが物語の「転」でなければなりません。批評を書いてくださる方がいて、そこを指摘してくれました

 エブリスタと出版社が提携して、コンテストがありました。

 ポプラ社のピュアラブ大賞では、優秀作品になり、選評をもらいました。それで、やはり後半の中だるみを指摘されました。
 大幅にエピソードの入れ替えをして、足りないエピソードを足しました。その作業もエブリスタの仲間の方に見てもらいました。

 それを集英社のナツイチ小説大賞に出し、優秀作品になりました。
 
 このように、「なつき」は、エブリスタで、進化を遂げています
 あと一歩、足りないものがあるのだと思います。
 まだまだ、見直しが必要です。

 それでも、私一人では、この作品はここまで大きくならなかったと思います。ただ字数が増えただけではありません。夏生自身も、物語の中で成長しています
 それは、感想を寄せてくださって励ましてくださり、直した方がいいと意見をくださった読者の方々のおかげだと思っています。
 本当に、心から感謝しています。

「なつき」を育ててくださり、愛してくださるみなさまに、お礼申し上げます。
 ありがとうございます。

 これからも、「なつき」をよろしくお願いします。

 完


※1
子供が数えで15歳になったことを祝う、主に中学校で行われる式。実施の有無は地域や学校による。内容もさまざまだが、将来の具体的な夢を誓ったり、講演会・記念活動などが行われる。

※2
ページごとにかんたんなコメントをつけられるエブリスタの機能。こちらの記事も参照。

※3
作品への好評価を伝えられるエブリスタの機能。noteにおける「スキ」、Facebookなどの「いいね」に相当する。


第三回は、コンテストに挑戦し続ける作者様のエッセイです。お楽しみに!

「monokaki」は、エブリスタが運営する「物書きのためのメディア」です。

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