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プロットを作りはじめる前の4つの質問|monokaki編集部

「作品を書き始めることはできるけど、完結させることができない」
「最初はよくても、だんだん今書いているものに飽きてしまう」
「書き進めるうちに、世界観設定が自分でもわからなくなる」……

こんな悩みを持ったことはありませんか?
「書き始める前にプロットを作ればいいのでは?」とは思うものも、そもそも「プロット」を作ったこともないし、作り方もわからない……。
今回は、そんな物書きさんのために、「プロット以前の段階」で作品を整理するための、4つの質問を用意しました。
書き始める前でも、書き出した後でも、どのタイミングでも構いません。書きあぐねたときに読んでみてください。

難しい質問ではないですし、ひとつひとつの質問に詳しく回答する必要もありません。
いま物語がどこまでできていて、どの部分ができていないかを明らかにするのが、この4つの質問の主な目的だからです。
サンプル回答も用意していますので、気軽に挑戦してみてください。

あらすじ:作中用語・造語を使用せず、140文字で作品を紹介してください

これは、以前に「おもしろいって何ですか?」#5でもご紹介したあらすじの作り方です。
あらすじが先にできている場合、先に書き出しておくと後の質問への回答が楽になりますし、あらすじがあやふやで定まらない場合、後回しにしても構いません。

今回は、サンプルとして和風ファンタジー作品を考えていきましょう。
たとえば以下のあらすじで、ぴったり140文字になります。

本好きの慈(ちか)と舞楽が得意な日向(ひなた)は兄妹同然に育った幼馴染み。互いに性別と真逆の特技を持つ2人は13歳の進学試験を替え玉受験した結果、揃って史上最高成績を叩き出してしまう。不正を言い出せないまま、音感0・運動神経0の慈は巫女候補として宮中へ、勉強嫌いの日向は官僚候補として大学寮に進む。

それではこの内容をもとに、どんどん先に進んでいきましょう。


質問1:作品世界の成り立ち、時代背景、社会情勢などを教えてください

最初のチェック項目は、「世界観設定」です。
現代日本が舞台の場合は、「現代の日本」だけでも構いませんし、もう少しこだわるのであれば、都会なのか田舎なのか地方都市なのか、モデルとなる場所があれば 、その気候や風土、人口規模なども想定しておくといいかもしれません。

ファンタジーの場合、どういった国なのかから考える必要があります。西洋風なのか中華風なのか、中世風なのか近代風なのか……。
どんな国にも、きっと政治体制があり、独自の通貨と経済圏があり、暮らしがあります。
SFの場合、時代設定も大事になってきます。10年後の未来と50年後の未来では、テクノロジーの水準も違うでしょう。
世界のすべてを作りこむ必要はありませんが、「ここは外せない」というポイントを書き留めておくと、後々振り返りやすいです。たとえばこのようにひとまず書いておきます。

日本によく似た国。神の宣託を下すことができると言われる最高位の巫女「神座(かぐら)」を頂点とした巫女たちが立法を、「右筆」と呼ばれる官僚たちが行政をとりしきることである程度豊かに発展している。ただし巫女は女性しか、右筆は男性しかなれない。


質問2:作品全体で何を解決するストーリーですか?

次のチェック項目は、「ルール」です。
特にエンタメ小説やジャンル小説は、ゴールを明確に設定することで各段に書き進めやすくなります。

恋愛ものなら「主人公が好きな相手と結ばれること」が(実際結ばれるかはさておき)ゴールでしょうし、ミステリなら「事件の犯人を明らかにすること」がゴールになります。部活ものなら「全国大会優勝」かもしれません。

ファンタジーやSFの場合、これをさらに噛み砕いて「主人公の勝利条件は?」「敵側の目的は?」の2つの質問に落とし込むこともができます。
主人公の目的は「父親を探し出すこと」、敵の目的は「10年来秘められたアイテムを見つけ出すこと」、そして両者の利害が一致したり相反したりする中で、ストーリーが展開していく……という基本構造になります。

作品のゴールは、W主人公のうちの一人、慈(ちか)が最高位の巫女「神座」になること。
作品全体を通しての明確な悪者はいないが、ほかにも「神座」の候補とそれを支持する勢力がある。


質問3:読者・視聴者が、この作品に感情移入や共感できるポイントは?

3つめのチェック項目は「没入感」です。
長編を書くときに、読者にずっと「ついてきてもらう」ためには、「この作品を読んでいると、こういう感情が刺激されるので気持ちよい」という、ある種の快感を与え続ける必要があります。
その「快感」は何なのか、読者はどういう感情を得たくてあなたの作品を読むのか、一度読者目線で考えてみてください。

「没入感」という言葉が難しければ、作家目線に戻って、伝えたい「メッセージ」と言い換えてもいいかもしれません。
たとえば、まったく同じあらすじの恋愛ものでも、「人を好きになることのすばらしさ」を伝えたい作品と、「学ラン眼鏡男子がいかにすばらしいか」を伝えたい作品では、自ずと書き口もターゲットも異なってくると思います。

ここで重要なのは、メッセージそのものに優劣はないということです。「人を好きになることのクソさ」を描いた恋愛ものでも構いません。
創作には、現実世界で抱く感情をなだめたり、増幅させたり、相対化する効果があります。
このことについてなら、普段から思うことがいっぱいあるし、無限に書けるな」と自分で思えたら、それは「没入感」の第一歩です。

・社会制度が不完全だと誰もが自分の才能に見合った道に進めるわけじゃない、けどその中でどう努力するか
・「こいつにだけはダメな奴と思われたくない」と思える同志がいるだけで、人生は救われる部分がある


質問4:この作品の推しポイントは?ほかの作品と最も異なる点は?

最後のチェック項目は「特長」です。これも読者目線の考え方です。
書きたいことを書きたいように書けるのはアマチュア作家の特権ですが、せっかく労力と時間をかけて作る作品ですから、できるだけ多くの人の目に触れたいし、この作品を「好き!」と言ってくれる人に出会いたいですよね。
この世界にすでにたくさんの物語がある中で、自分の作品の「おすすめポイント」「差別化ポイント」はどこなのか、一度考えてみましょう。

小説投稿サイトを利用している方なら、自分が書こうと思っているジャンルのランキングを開いて、上位10作品のタイトル・あらすじをざっと眺めてみてください。
そして、その中に、自分がこれから書こうとしている作品が入っていると想像してみてください
ほかの9作品にはない部分ってどこでしょう?
あるいは、ランキングの中でも特に目をひくあらすじやキャッチコピー、タイトルを見つけて、その理由を深堀りしてみるのもいいかもしれません。

どうしても思いつかない場合は、シンプルに自分が書きたいものを列挙するのでもOKです。たとえばこんな風に。

・ファンタジーだけど、「組織」や「社会」でどう勝ち上がるかが話の主軸になる点(日向、右筆をめざす編)
・スポーツモノや音楽モノのような「才能」バトルである点(慈、巫女をめざす編)
……の、「一粒で二度おいしい」点


4つの質問への回答、できましたでしょうか?
人によって、作品によって、すぐに答えられるものと、少し答えにくいもの、両方あると思います。
最初にも書いたように、いま物語がどこまでできていて、どの部分ができていないか明らかにするのが質問の目的です。

ここまで考えても、次に「キャラクター」「印象的なシーン」「セリフ」などを盛り込んでいかなければいけないので、これだけで物語はできませんし、「自分は物語の骨子より、キャラやシーンから先に浮かぶタイプ!」という物書きさんもたくさんいると思います。
サンプルにもあるように、すごくこだわった回答をする必要はありませんし、できるだけハードルを下げて書き出すのがこつです。
それでも、作品が持つコアな「世界観設定」「ルール」「没入感」「特長」を押さえておくと、困ったときの羅針盤になります

以下にWordファイルも用意していますので、ネタ作りに、創作の気分転換に、活用してもらえたら幸いです。

(タイトルカット:横槍メンゴ


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*本記事は、2018年08月14日に「monokaki」に掲載された記事の再録です。

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