「面白い」をいかに読者に届けるかは編集者の仕事|宝島社×エブリスタ「『この文庫がすごい!』大賞」連動、特別インタビュー |五軒目〔後編〕|黒澤 広尚
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「面白い」をいかに読者に届けるかは編集者の仕事|宝島社×エブリスタ「『この文庫がすごい!』大賞」連動、特別インタビュー |五軒目〔後編〕|黒澤 広尚

「創作居酒屋」そこは編集者・作家・書店員・漫画家・イラストレーター・サイト運営者・読者など分け隔てなく、書籍業界にかかわる人々が集まり、創作論を語り合う居酒屋である。

エブリスタで開催される【『この文庫がすごい!』大賞 】、エブリスタ開催の宝島社コンテストとしては2015年に開催された【『このマンガがすごい!WEB』”専門店”マンガ賞】以来6年ぶりの開催となります。応募開始直後からたくさんのご応募をいただいており、非常に盛り上がっております。

ゲストは前回から引き続き

・宇城卓秀 様(株式会社宝島社 書籍局第4編集部 編集長)
・鷹樹烏介 様(作家)
・森崎緩 様(作家)

の3名でお届けしております。

※今回のインタビューはオンラインで開催いたしました。

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『この文庫がすごい!』大賞 」は絶賛応募受付中!

「箇条書きでアイデアをとにかく一杯書くようにしています」(鷹樹)

――前半はノンジャンルエンタメ小説について熱いトークをいただきました。後半はSNSで募集した質問に、お時間が許す限りお答えいただければと思います。最初の質問です

Q:浮かんだアイデアをプロットに落とし込む過程で、大事なことはありますか? 

森崎:私は浮かんだアイデアを曲げないようにするためにゴールを最初に決めておくことを意識しています。
執筆する中でアイデアを入れるだけ入れてしまうと、結末が変わってしまって、辻褄が合わなくなってしまうことがあります。最初に結末を決めて、あとは最初から順番に執筆しています。結末を変えてしまうアイデアは次回作にいかすなどして、無理に入れないようにしています。

宇城:森崎さんの作品は応募作の時点でストーリーはかなり整理されていて、書籍化にあたってはキャラクターを更に掘り下げたり、より深みを出すためのシーン加筆などをお願いしました


鷹樹:私はデビューの頃は何も考えずに書いていましたね。ただ、実際にデビューが決まって、編集の方と相談してみると、辻褄の合わない部分や、必ずしも必要ない箇所、枝葉の部分で不必要な箇所がたくさんありました。順繰りに執筆していってだめになってしまったところですね。
今は執筆方法として、箇条書きでアイデアをとにかく一杯書くようにしています一通り書いたら、話の順番に並べていきまして、エクセルに書き出していきますエクセルの間にテキストを入れるなどしましたら、次はワードに書き出していき、プロットとしてテキストに落とし込む、といった形で進めています。

宇城:順繰りに執筆されることがだめというわけではないのですよね。ただ、鷹樹さんにはあわない執筆方法だったかなと思っています。
鷹樹さんは順番に書いていきますと、組織やガジェット等の細かいこだわりの部分に入ってしまうところがありまして、いきすぎてしまうと読者にとってフレンドリーではなくなってしまう部分があったのかなと。
書き方はいろいろありますが、例えば森崎さんですと順番に執筆されて、完成度の高い作品を出されているので、その作家の方に合った執筆方法、というものがあると思います。

鷹樹:そうですね。今は編集者さんに手綱を引っ張っていただいたことで、最初とは書き方を変えて、何を書きたいのかという軸を大切に執筆するようにしています。


「小説は想像でも書けますが、料理は身近なものだけに、自分の経験がいかしやすいジャンル」(森崎)

――ありがとうございます。SNS上で創作方法が話題にあがることがありますが、自分にあった執筆方法をさがすのは大切ですよね。さて、次はその執筆方法に至る前の質問なのですが

Q:作品を執筆する時にどこから始めますか? 企画書から、プロットからなど教えてください

鷹樹:警察小説というジャンルはリアリティーを重視しなければいけない部分もあるので、警察から出ている犯罪白書や世界の猟奇事件からスタートすることが多いですね。
『警視庁特任捜査官グール 公安のエス』も、実際の出来事からアイデアをいただいています。
ただ、それはあくまでアイデアの部分であって、書き始めるとまったく別の内容になることがほとんどですね。

宇城:鷹樹さんはいくつもアイデアを持っているので、こちらが聞けばどんどんレスをくれ、提案してくれるのがありがたいです、常にアイデアを吸収されているので、それが大きいのではと思います。

森崎:私はグルメジャンルですが、自分でまず料理をして、作ったものを書いていますね。
主人公が料理をしている設定の作品なので、料理の流れや実際に食べたときの味も描写する必要があります。小説は想像でも書けますが、料理は身近なものだけに、自分の経験がいかしやすいジャンルかなと思います。

宇城:森崎さんとは打ち合わせのなかで、作中のどの料理も実際に作られているとお聞きして、レシピテキストをいただいて作った書店用POPは好評でした! 
作ったことがあり、お勧めの料理を作中に登場させるということもグルメものの着想点としてはいいかもしれませんね。

森崎:あとはキャラクターについて、できるだけ現実にいそうな人物を登場させるように意識しています
料理ジャンルということもあって、読者さんの共感が大切だと思っているので、登場人物も特別な存在というよりは、等身大の社会人らしい悩みも持つようにしています。

――いそうな人物、というと性格を決めるときどういった手順で決められているでしょうか? また、いただいている質問でこのようなものがありました

Q:恋愛小説を書く時に、登場人物に感情移入をして書いていますか?

森崎:まず名前を考えて、その名前にぴったりな性格にしていますね。播上君はちょっと変わった名字なので、料理スキルは持っていますが、名前は「まさのぶ」なので普通の男の子という形にしています。
そして感情移入ですが、キャラクターには自分の理想像を反映させるというよりは、子供のような形で遠くに置いていますね。理想ですと、変なことさせられないので。感情移入しすぎず、一歩引いて見守っているイメージが近いかもしれません。

――なるほど、最近ですとキャラクターの第一印象で読者をひきつけるというようなご相談やハウツーがあることも多いので、名字から敢えて普通の設定を引き出すというのは、改めて宝島社文庫様の間口の広さを感じますね

宇城:もちろんコンテストでは特殊設定を持ったキャラクターが登場する作品の応募もお待ちしています!

――契約結婚、契約恋愛といったキーワードがありますが、定義はなんでしょうか? また、書く際の注意点などはありますか?

宇城:定義としてはどちらも本人の意図しないところで進んでいる恋愛というものがありますが、前回もお話しましたが、あまり固定概念にとらわれすぎないでもらいたいなとは思っています。
もちろんエンタメ恋愛小説として読者を動かすためには、ときめき要素であったり、二人の関係性の発展であったりということが必要ですが、そもそもの設定であったり、二人の関係性についてはぜひオリジナリティを盛り込んでいってほしいです。ニーズをとらえつつ、新しい要素を盛り込んでいくことで、市場でも評価されるタイトルになっていくかと思います。


「実際の警察や事件などをまとめたムック本を読むのがお勧めです」(鷹樹)

――さて、いただいている質問の中で、警察小説に関する質問をさせてください。

Q:警察小説にあまりなじみがないのですが、王道でなくても、異世界や異能力等のファンタジー要素を入れていいですか?

宇城:「エンタメとして優れているか」がメインになりますので、王道であるかどうかは重要ではないです。

鷹樹:そもそも私の作品が王道ではないですからね(笑) ファンタジー要素ありますし。

宇城:はい。先ほどの契約恋愛の質問にも関わってくるんですが、契約恋愛・結婚、警察小説といったジャンルにふわっとした共通認識のようなものはあるのですが、定義できるものではないと考えています。エンタメ性が高ければ問題ないですし、そのうえで王道から外れて、新しければ尚よいと思っています。
異世界転生や特殊能力は確かに突飛な発想ではありますが、「あるかもしれない」「その通り」だと読者に思わせることができれば勝ちですし、警察がする仕事なのかよくわからないものがあっても、警察の中にそういった役割の人がいるかもしれないと信じさせることができればOKだと思います。上手く、嘘をついてください

――警察小説もノンジャンルに近いということで、むしろこれから警察小説を書かれる方にこそチャンスがあるのかもしれませんね。ちなみに鷹樹先生はどういったきっかけで作品を執筆されたのでしょうか? 下記の質問もあわせてお答えいただけますか

Q:警察に限らず特殊能力ものの執筆時の取材方法を教えてください

鷹樹:書き始めたきっかけは菊地秀行先生『妖獣都市』(徳間書店刊)シリーズがきっかけでした。作中で主人公が使う銃が「S&W M29 44マグナム」をモデルにしていたので、主人公にもそれを持たせました。「M29」は、ダーティハリーの愛銃でもあります。ああいった世界観を書いてみたいと思って書き始めましたね。
警察小説を書くうえでのアドバイスとしては、正直敷居が高くなっている部分と近いのですが、ある程度のリアリティーを持たさないと読者が入ってこないので、「調べる」ことが好きな方であれば、向いているのかなと思います。

簡単に調べる方法としては、実際の警察や事件などをまとめたムック本を読むのがお勧めです。読む方のことを考えて作っているので、読み進めていても面白いと思います。
極端な話、警察小説を読むのが好きじゃなくても、ムック本さえ読めばいいかと。あっ、できれば宝島社のムック本で! 絶版になると手に入らなくなるので、見かけたらすぐに買った方がいいと思います。入口としては本当によくできていると思いますよ。

宇城:ありがとうございます(笑) 鷹樹さんの仰る通り、資料を読むことでアイデアが出てくる方もいらっしゃいますので、資料を読むのもひとつの方法かなと思います。
ですが、いっそ完全に異世界ものとして、資料一切なしで挑まれるのも面白いかもしれません。

――なんと、資料一切なしで警察小説ですか? 正直このインタビューではハウツーを聞くつもりで始めましたので、エンタメノンジャンルというところの懐の深さにびっくりしています。

宇城:求めているのはエンタメ小説であって、緻密さが必ずしも必要なわけではないですからね。辻褄合わせは一緒に頑張りましょう。そのために編集者はいますので。

鷹樹:エンタメですので、おもしろければそれでいいと思います。


「「これ、面白いけどどうでしょう?」という気持ちで参加いただけるとありがたいです」(宇城)

――それでは、そろそろお時間になりました。最後に、作家を目指される方に一言お願いしてよろしいでしょうか?

鷹樹:怖がらないで、自分の好きなものを書いて出してはどうでしょうか?
敷居が高いといっていますが、飛んでみないことには障害をこえられるかわからないものです。怖がらずにどんどん挑戦してください。
私みたいにまったく読まれていない、評価されていない作品でもいけますので、楽しんでやってみてください。応募して何かリスクがあるわけではありませんから。

森崎:コンテストに応募することに自信がない方がいましたら、とりあえず出せばいいことあるかと思います。
選ぶのは編集の方々なので、自分が気づいていない魅力に気づくこともあるかと思います。挑戦するのはいいことなので、ぜひ応募してみてください

宇城:ほとんど言われてしまいましたね(笑) タグ、ジャンルといった細かいところには気にせずに「これ、面白いけどどうでしょう?」という気持ちで参加いただけるとありがたいです。その「面白い」をいかに読者に届けるかというのは我々編集側の仕事なので「面白い」をPRしていただければと思います。
特に今回は日本語限定、文字数制限といったところはありますが、「面白いけどレギュレーション違反」はないと思いますので、応募しないのはもったないですよ。

鷹樹:細かいところは全部編集さんがなんとかしてくれるので!

宇城:限界はありますが(笑)


宝島社×エブリスタ「『この文庫がすごい!』大賞」
対象:文庫で刊行することを想定した、エンターテインメント小説、ジャンル不問
応募枚数:20,000文字以上の作品(短編連作、未完結でも可。受賞した際には書籍一冊分(100,000~150,000文字程度)に加筆・改稿できる作品であること)
応募受付:2021年11月1日(月)~2022年1月31日(月)27:59:59まで
中間発表:2022年4月、最終結果発表:2022年5月予定
賞典:宝島社からの書籍化検討、受賞1作品につき10万円、優秀作品はエブリスタ編集部からの選評をメール送付
詳細:https://estar.jp/official_contests/159643

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