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「努力」で「センス」を手繰りよせたい|Autumn 2019|monokaki編集部

当欄は、最近の記事を編集長の有田が振り返って語る、monokakiの「編集後記」です。

今月から、新たに#ハッピーBLウェンズデーという企画が始まりました。毎週水曜日をBL曜日として、お互いにおすすめのBLを紹介し合うTwitter上のキャンペーンです。おもしろい作品の読み合いを推進したく、ご紹介いただいた作品はすべて、monokaki公式TwitterからもRTしています。(自薦のものはRTしません。すみません。)
BLジャンルが定着したら、ホラーや恋愛、ライト文芸など、ほかのジャンルにも拡大していきたいと思っていますので、読み専含むBL好きの皆さんはぜひご参加ください。

読み合いは、Web小説の大いなるたのしみの一つです。自分の作品に感想をもらう……それだけでも至上の喜びですが、相手も創作者で、作品が読めて、「こういうものを書く人が、自分の作品をこう感じるのか!」という知見まで得られるなんて。オフラインでひたすら作品を書いている人には、けして得られない特権ではないでしょうか?

上手くなりたければ、閲覧数を上げたければ、コンテストで受賞したければ、デビューしたければ、もうとにかく、読んでください。この一語に尽きます。王谷晶さんも「センスって何ですか?」の中で語っています。

それがセンスだ。つまり、知識探究心欲望そして経験の合わさったものだ。一品を選び出す前の、選択肢をいかに考えつくか、知っているか、見えているかというところからセンスは始まっている。

これを物書きの作業に応用すると、広く世界を識り、多種多様な人の立場に思いを馳せ、本を読みニュースを見、人と会い話し、たくさんの情報を取り入れた上で、ひとつの物語を作る。つまり、インプットが大切という話になる。「またその話かよ?!」そうです。またその話なんである。

またその話なんである

今月は第二回氷室冴子青春文学賞の発表もありました。一次選考の下読みに私も参加したのですが、「センスのいい原稿」は、どの時点でそうとわかると思いますか? タイトル、あらすじ、1ページ目……。
作品による微妙な差異はもちろんありますが、私の場合、ゆくゆく大賞や準大賞をとるような作品は、エブリスタで「作品を読む」をクリックして、ぱっとページが開いた瞬間にすぐわかります。「あ、この人はうまいな。センスあるな」と。

Web・紙問わず、新人賞の下読みを経験したことのある方から、似たような話はよく聞きます。しかし「なぜか?」と問われると言語化がむずかしく、審査の信憑性にも関わる部分なので、これまであまり言及してきませんでした。
それが、校正者の逢坂千紘さんによる「『記号』に絶対ルールはない!あるのは便利な互換性」を読んで、ぴんとくる表現があったのでご紹介します。

つまり、升目は原稿空間を支える床、文字や升以外の記号は原稿活動のためにインストールすべき家具です。その家具のなかでも、記号は特殊な家具だと言えます。なぜなら、その原稿における記号の用法をみれば、その原稿がどんな部屋に住んでいるのかが明確にわかるからです。原稿の住環境が明け透けになるわけです。

原稿の住環境。「あ、この人はうまいな。センスあるな」と思わせる原稿は、漢字/ひらがなのひらき、記号の使い方、改行位置、どれもが端正で、「原稿の住環境」が快適そうなのです。たとえるなら、家事動線が考え尽くされた部屋の間取りのように、読み手を迷いなく物語の「動線」に乗せてくれる。内容を読むまでもなく、そんな「見た目」をしているんですね。

実は、逢坂さんの新シリーズ「ことばの両利きになる」に書かれていることは、どれもとてもハイレベルです。優しい語り口の中に、日本語の本質がいっぱい詰まっています。校正の「実践編」とも言える「物書きのための校正教室」シリーズとあわせて、これも何度でも読み返してほしい連載です。

そうはいっても、一朝一夕にセンスなんて身につかないよう……! というそこのあなたに、実践的なダメ出しが満載の2記事を紹介します。

ハゲvsブラ!激論・氷室冴子青春文学賞最終選考レポ|創作ハウツー

“dos and don’ts”で言うと“don’ts”、「しない方がいいこと」を、膨大な数の作品を読んできたプロの皆さまにわかりやすく説明してもらっています。試しにいくつか挙げると……

・あの時実は……と過去の真相ばかり明かされ、話が進まない
語り手がころころ変わってわかりにくい
登場人物が不必要に死ぬ
登場人物が動かない
・登場人物が動かないけどラスト近くで突然天啓を得てハッとする
・「俺たちの冒険はこれからだ!」的な終わり方
・最後疲れてきちゃって「もういいや!」と投げた終わり方
●年後……というエピローグが蛇足になっている
・二巻に続きそうな思わせぶりな伏線

ああ、もう身に覚えがありすぎて、書きながら悶えてしまいます。つらい……。ちょっとでも思い当たる節がある方は、今日ここが推敲の第一歩です。

エブリスタのコンテストに応募してる方は、まずは同じ賞で大賞や準大賞を取っている作品から「読み合い」を始めてみてはいかがでしょうか? ページを開いただけですぐわかるほど、物語への動線がしっかりした作品が並んでいるはずです。

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来月11/24(日)に東京流通センターで開催される「文学フリマ東京」に、monokaki編集部も参加します。
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*本記事は、2019年07月30日に「monokaki」に掲載された記事の再録です。