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Web時代の作家たち

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今ここでやらなかったらこの先やれる機会は一生ない|ウェルザード インタビュー

今ここでやらなかったらこの先やれる機会は一生ない|ウェルザード インタビュー

 エブリスタで2011年から2014年にかけて『カラダ探し』全四部作を投稿し、2013年から2015年にケータイ小説文庫として書籍化。2014年から2019年まで村瀬克俊によるコミカライズが「少年ジャンプ+」にて連載、その漫画版に準拠したWebアニメが配信され、2022年には橋本環奈主演で映画化されるなど、小説だけでなくさまざまなジャンルで『カラダ探し』はメディアミックスされて展開していった。
 

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一日も休まず書けば、必ず結果がついてくる|望月麻衣 インタビュー

一日も休まず書けば、必ず結果がついてくる|望月麻衣 インタビュー

 2013年にエブリスタ主催第2回電子書籍大賞を受賞しデビュー。その後、大ヒット人気シリーズとなる『京都寺町三条のホームズ』を開始。同作は2016年には「第4回京都本大賞」を受賞し、名実ともに「京都」のご当地小説としても多くの人に知られることになった。
 現在16巻が発売されている『京都寺町三条のホームズ』シリーズだけではなく、デビュー後から精力的に小説を書き続けているその意欲やアイデアはどこから

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読者の心の掴み方は全部Webから教わった|小野美由紀 インタビュー

読者の心の掴み方は全部Webから教わった|小野美由紀 インタビュー

 エッセイ『傷口から人生。 メンヘラが就活して失敗したら生きるのが面白くなった』やスペインにあるカトリック三大巡礼路のひとつ、カミーノ・デ・サンティアゴを歩いたドキュメント『人生に疲れたらスペイン巡礼  飲み、食べ、歩く800キロの旅』などの著作でも注目され、Webでライターとしても活躍されていた小野美由紀氏。
 早川書房のnoteで異例のアクセス数「20万PV」を越えた短編小説『ピュア』 。その

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わかりあえない人の気持ちがわかるような小説を書いてみたい|二宮敦人 インタビュー

わかりあえない人の気持ちがわかるような小説を書いてみたい|二宮敦人 インタビュー

 エブリスタの前身であるモバゲータウンからWeb投稿で小説を書き始め、あるきっかけで出版に持ち込んだことで商業出版デビュー。初期にはホラー作品が多かったが、デビュー10周年を迎えて近年ではヒューマンドラマ作品を多く手掛けるようになった。
 まさにWeb小説の申し子とも言えるこの作家は、フィクションだけではなくノンフィクション作品での評価も高い。Web小説を書き始めた理由から、小説との向き合いかたや

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くだらないなっていう一言を一週間抱えて生きていた|燃え殻 インタビュー

くだらないなっていう一言を一週間抱えて生きていた|燃え殻 インタビュー

 テレビ美術制作会社で働きながら、日報代わりに書いていたTwitterで日々感じていることを時には自虐的にツイートしていく中で、多くのフォロワーを獲得した。そして、はじめてのウェブ連載となった小説『ボクたちはみんな大人になれなかった』が書籍化されると即重版がかかり、新人作家としては異例の大ヒットとなった。
 SNS時代の書き手の寵児とも言える新しい時代の作家は小説だけではなく、エッセイと意欲的にい

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おもしろがらせたい、サプライズ精神が創作の源|八月美咲 インタビュー

おもしろがらせたい、サプライズ精神が創作の源|八月美咲 インタビュー

 配信開始後、さまざまな電子コミックサイトのランキングに彗星のように現れ、サイトによっては『鬼滅の刃』を抑えて1位を獲得したサスペンスコミックがある。『私の夫は冷凍庫に眠っている』。DV夫を殺したはずが、何事もなかったかのように主人公の前に現れてきて……という衝撃的な場面から始まるこのコミックは、エブリスタに投稿された作品が原作だ。原作者・八月美咲氏に、ヒット原作執筆の秘訣を聞いた。

「こうだっ

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9年間書き続けた。なんだって、やり続けた者が強い。|冨森駿 インタビュー

9年間書き続けた。なんだって、やり続けた者が強い。|冨森駿 インタビュー

毎年夏には書店に並ぶ各出版社の「夏の文庫」フェア。今年の集英社「ナツイチ2020」に「エブリスタ×ナツイチ小説大賞」受賞作『宅飲み探偵のかごんま交友録』がラインナップされた。今作がデビューとなった著者の冨森駿氏にエブリスタでの小説執筆についてや、舞台となった鹿児島についてメールインタビューを行った。第2回「エブリスタ×ナツイチ小説大賞」に応募を考えている方は冨森さんのインタビューを読んで、その後に

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おもしろくするためには手段を選びたくない|天祢涼 インタビュー

おもしろくするためには手段を選びたくない|天祢涼 インタビュー

 「一作家一ジャンル」と呼ばれるほど個性的な作家を輩出している「メフィスト賞」を受賞し『キョウカンカク』で2010年にデビュー。2017年に発売になった社会派青春ミステリー『希望が死んだ夜に』では、「おもしろい作家が凄い作家になった」と文芸批評家からも絶賛され、多くの書店員からも支持され店頭でも広く展開された。
 そして、精神的な続編ともいえる『あの子の殺人計画』を発表しながら、日常ミステリー『境

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長所を磨いて、自分だけの創作の切れ味を大事にしよう|川越宗一 インタビュー

長所を磨いて、自分だけの創作の切れ味を大事にしよう|川越宗一 インタビュー

 趣味として書き始めた小説を改稿の上、松本清張賞に応募した『天地に燦たり』でデビュー。長編二作目『熱源』が初ノミネートで直木賞を受賞。多くの物書き志望者の夢を最速で実現したように見える川越宗一氏。

 『熱源』では、樺太だけではなく、ウラジオストック、サンクトペテルブルグ、東京を舞台に、日本人にされそうになったアイヌとロシア人にされそうになったポーランド人を主人公に物語が展開する。なぜこんなにもス

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あらゆる感情がホラーの引き金になりうる|藤白圭 インタビュー

あらゆる感情がホラーの引き金になりうる|藤白圭 インタビュー

 もはや聞きなれてしまうほど「出版不況」と繰り返され、小説の単行本が3万部・5万部売れれば「スマッシュ・ヒット」と言われる現在。デビュー作にして単巻10万部を超える驚異的なタイトルがある。エブリスタ発の超短編ホラー『意味が分かると怖い話』(以下、『意味怖』)。2018年7月の発売以来、22刷10万部超。昨年出版された続刊『意味が分かると震える話』『意味が分かると慄く話』(ともに河出書房新社)も好調

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「世界との折り合いが悪い人たち」に寄り添う|凪良ゆう インタビュー

「世界との折り合いが悪い人たち」に寄り添う|凪良ゆう インタビュー

 作家の新たな一面に気付かされるような作品に出会うことは、小説を読んでいく中でも特に幸せな体験のひとつだ。それが大好きな作家なら、なおさら。

 今年、書店の新刊台に平積みにされている『流浪の月』を手に取り、凪良ゆうという作家を「再発見」した、あるいはとうとう「出会った」読者は多いだろう。暗色のテーブルに載せられたストロベリーアイスクリームの装丁は、まるで作家が持つ人間洞察の深さと、生活描写の甘や

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取材や下調べで何を感じたか、が執筆の第一歩|天花寺さやか インタビュー

取材や下調べで何を感じたか、が執筆の第一歩|天花寺さやか インタビュー

京都府警が擁する「人外特別警戒隊」。通称、「あやかし課」――。

Web小説のジャンルとして、ライト文芸のジャンルとして、すっかり定着した感のある「あやかし」もの。その本家本丸とも言える重厚な歴史を持つ街・京都を舞台にした、天花寺さやか『京都府警あやかし課の事件簿』が、第7回京都本大賞を受賞した。エブリスタ発の作品の受賞は2016年の『京都寺町三条のホームズ』(望月麻衣)に次ぎ、3年ぶり2回目。

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なぜこんな物語を書こうとしているんだろう?|飛浩隆 インタビュー

なぜこんな物語を書こうとしているんだろう?|飛浩隆 インタビュー

 「飛浩隆16年ぶりの新作長編」。このキャッチを聞いただけで舌なめずりしそうになる本好きは、きっと少なくないだろう。「小説にしかできない表現」について考えるとき、いつも真っ先に飛氏の作品が思い浮かぶ。
 2002年に〈廃園の天使〉シリーズ1巻にあたる『グラン・ヴァカンス』を上梓してから16年、今年発売された『零號琴』は6冊目の著作となる。けして多作ではないが、すべての作品から、その世界の歴史のどこ

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「自分が読みたいもの」を突き詰めると、扉が開く|深緑野分 インタビュー

「自分が読みたいもの」を突き詰めると、扉が開く|深緑野分 インタビュー

暇な時間ができると、祖母は玄関先のポーチにあるロッキングチェアに座ってゆらゆら揺れながら、アイスティーを片手にのんびり外を眺めた。舗装された道路を丸っこい形のフォード車が走り、緑の茂みは湿気に潤い、隣の家の二階からジャズが流れてくる。トランペットとドラムのはずむ音色に指先でリズムを取る祖母を、玄関の網戸越しに観察していると、僕の視線に気づいた彼女は振り向き、決まってこう言うのだ。

 「五感に訴え

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