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Web時代の作家たち

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#有田真代

あらゆる感情がホラーの引き金になりうる|藤白圭 インタビュー

あらゆる感情がホラーの引き金になりうる|藤白圭 インタビュー

 もはや聞きなれてしまうほど「出版不況」と繰り返され、小説の単行本が3万部・5万部売れれば「スマッシュ・ヒット」と言われる現在。デビュー作にして単巻10万部を超える驚異的なタイトルがある。エブリスタ発の超短編ホラー『意味が分かると怖い話』(以下、『意味怖』)。2018年7月の発売以来、22刷10万部超。昨年出版された続刊『意味が分かると震える話』『意味が分かると慄く話』(ともに河出書房新社)も好調

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「世界との折り合いが悪い人たち」に寄り添う|凪良ゆう インタビュー

「世界との折り合いが悪い人たち」に寄り添う|凪良ゆう インタビュー

 作家の新たな一面に気付かされるような作品に出会うことは、小説を読んでいく中でも特に幸せな体験のひとつだ。それが大好きな作家なら、なおさら。

 今年、書店の新刊台に平積みにされている『流浪の月』を手に取り、凪良ゆうという作家を「再発見」した、あるいはとうとう「出会った」読者は多いだろう。暗色のテーブルに載せられたストロベリーアイスクリームの装丁は、まるで作家が持つ人間洞察の深さと、生活描写の甘や

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取材や下調べで何を感じたか、が執筆の第一歩|天花寺さやか インタビュー

取材や下調べで何を感じたか、が執筆の第一歩|天花寺さやか インタビュー

京都府警が擁する「人外特別警戒隊」。通称、「あやかし課」――。

Web小説のジャンルとして、ライト文芸のジャンルとして、すっかり定着した感のある「あやかし」もの。その本家本丸とも言える重厚な歴史を持つ街・京都を舞台にした、天花寺さやか『京都府警あやかし課の事件簿』が、第7回京都本大賞を受賞した。エブリスタ発の作品の受賞は2016年の『京都寺町三条のホームズ』(望月麻衣)に次ぎ、3年ぶり2回目。

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なぜこんな物語を書こうとしているんだろう?|飛浩隆 インタビュー

なぜこんな物語を書こうとしているんだろう?|飛浩隆 インタビュー

 「飛浩隆16年ぶりの新作長編」。このキャッチを聞いただけで舌なめずりしそうになる本好きは、きっと少なくないだろう。「小説にしかできない表現」について考えるとき、いつも真っ先に飛氏の作品が思い浮かぶ。
 2002年に〈廃園の天使〉シリーズ1巻にあたる『グラン・ヴァカンス』を上梓してから16年、今年発売された『零號琴』は6冊目の著作となる。けして多作ではないが、すべての作品から、その世界の歴史のどこ

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「自分が読みたいもの」を突き詰めると、扉が開く|深緑野分 インタビュー

「自分が読みたいもの」を突き詰めると、扉が開く|深緑野分 インタビュー

暇な時間ができると、祖母は玄関先のポーチにあるロッキングチェアに座ってゆらゆら揺れながら、アイスティーを片手にのんびり外を眺めた。舗装された道路を丸っこい形のフォード車が走り、緑の茂みは湿気に潤い、隣の家の二階からジャズが流れてくる。トランペットとドラムのはずむ音色に指先でリズムを取る祖母を、玄関の網戸越しに観察していると、僕の視線に気づいた彼女は振り向き、決まってこう言うのだ。

 「五感に訴え

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人生を解釈する光みたいなもの|末満健一 インタビュー

人生を解釈する光みたいなもの|末満健一 インタビュー

 「このアイデアや着想は、一体どこからやってくるのか?」
 すばらしい作品に触れたとき、物書き志望でもそうじゃなくても、読者や観客がまず疑問に思う点だろう。0から構想されたオリジナル作品はもちろん、原作のある作品の映画や舞台、ノベライズでも、原作の持つエッセンスを予想外に濃く深く展開する創作に出会ったとき、作家がそこに辿り着いた過程が気になる。0からの創作ではないからこそ、余計に気になるとも言える

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時間は連続しているのか、世界はほんとうにあるのか|早瀬耕 インタビュー

時間は連続しているのか、世界はほんとうにあるのか|早瀬耕 インタビュー

 個人的な話から始めたい。「2017年、一番おもしろかった国内小説はなに?」と問われたら、『未必のマクベス』と迷わず答える。同書との出会いは秋、書店の文庫棚に平積みされている淡い夕景の装丁と、「22年ぶりの新作」というポップの文言が目をひいた。

 作者の名前は早瀬耕。不勉強ながら、初めて知る名前だった。ページを繰ると、定型的な表現になってしまうが移動中も食事中も時間を惜しんで夢中で読み、ほぼ一晩

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転げ回って泣きついて、それでも〆切は迫ってくる|阿部智里 インタビュー

転げ回って泣きついて、それでも〆切は迫ってくる|阿部智里 インタビュー

 「ハリー・ポッター」、「勾玉三部作」「十二国記」「精霊の守り人」 シリーズに親しみ、幼い頃から「作家になる」と決意していた少女は、16歳で書いた小説「玉依姫」で松本清張賞の二次選考まで進む。大学進学後、同じ世界観・キャラクターで書いた和風ファンタジー「烏に単は似合わない」で、同賞を最年少受賞。
 「実際にプロになってみて、想像とギャップがありましたか?」と訊くと、「特にないですね。そもそも私はデ

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