「語り」と「ダンス」が小説に動きをもたらす|町田康と古川日出男|仲俣暁生
小説の世界に他のジャンルの表現者が参入することは、いまではもう珍しくもなんともない。音楽家や美術家、劇作家やマンガ家、さらにブロガーやAV女優や社会学者までが小説を書く時代である。しかしそうした「参入組」が、小説の世界にあらたな豊かさを持ち込めたかどうかは、厳しくジャッジしなければならない。
平成9年の第116回芥川賞は、エコーズというロックバンドでヴォーカリストをしていた辻仁成(平成元年に『ピアニシモ』でデビュー)の『海峡の光』と、劇作家の柳美里(平成6年に『石に泳ぐ